遺言書なしの場合は遺留分ではなく法定相続分で相続される点に注意

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相続頑張るFPです。

 

「特定の相続人に特別にお世話になったので相続の割合を多くして感謝を表したい」
「でも他の相続人から不満が出たり不公平感を感じさせてしまわないか心配だ」

このようなことを心配される方も少なくないようです。

遺言書を作成したいと思いつつも「法定相続分の通りに財産を分けないといけないのか」「遺留分との関係は?」と疑問をお持ちの方もおられます。

それでここでは、遺言書と遺留分の関係について解説したいと思います。

 

 

遺留分とは

相続の基本的な考え方として、だれでも財産を自分の思い通りに処分することができます。
法律によって遺言は最大限尊重されているため、残された遺族は、基本的には遺言通りに財産を振り分けることになっているのです。

 

とはいえ、遺言者が自分の意思で自由に財産を処分することができる、というのは相続人以外の人にも財産を与えることができることを意味します。

 

では仮に「全財産を愛人に譲る」と遺言すればどうでしょうか。
残された家族や子供はたちまち生活に困ってしまうかもしれません。また心情的にもこれはあまりに酷な内容といえるでしょう。

 

そこで民法では、遺族の生活保障の観点から、一定基準の相続財産を遺族に残すように定めています。
これが「遺留分」です。

 

この遺留分の制度で遺言に一定の制限をかけて暴走を防いでいるわけです。
結果として、相続人はこの遺留分の制度によって、最低限度の財産を相続できるよう保証されているのです。

 

遺留分が認められる相続人

遺留分が認められるのは下記の人に限られています。

被相続人の配偶者
・直系卑属(子、孫、ひ孫など)
・直系尊属(親、祖父母、曾祖父母など)

 

ここからわかる通り、被相続人の兄弟姉妹には遺留分は認められていません。
遺言内容で取り分がゼロだったとしても、被相続人の兄弟姉妹は法的に何も主張することができないわけです。

 

被相続人の子供が亡くなっているときは、亡くなった子供に子や孫がいれば代襲相続により遺留分が認められます。
たとえば、被相続人の子供が被相続人より先に亡くなっていて、その子供に子(被相続人からすると孫)がいれば遺留分が認められます。

 

遺留分が認められない相続人

相続人であっても下記に該当する人には遺留分は認められません。

・相続放棄者
・相続欠格者
・相続廃除者

 

相続放棄者

相続放棄とは、被相続人の一切の財産に対する相続権を放棄することです。
一切の財産、つまりプラスの財産もマイナスの財産も引き継がない、ということです。

 

相続放棄した場合、放棄した人は始めから相続人ではなかったものとみなされ代襲相続はできません。
子供が相続放棄の選択をした場合には、孫にも遺留分は認められないことになります。

 

相続放棄は単なる相続人の間での口約束や宣言ではありません。
法的に相続放棄が認められるためには、相続開始から3か月以内に家庭裁判所へ届け出ることが必要です。

 

相続欠格者

相続人であっても、下記にあてはまる人は相続人としての権利を失うことになります。

詐欺や脅迫によって被相続人に遺言書を書かせたり変更させたりした
・遺言書を偽造、変造、破棄、隠匿した
・被相続人や自分と同順位、先順位の相続人を殺したり殺そうとして刑を受けた

 

これらに当てはまる人は、相続欠格者として遺留分は認められません。

 

ただし代襲相続は認められるので、相続欠格者の子供(被相続人からすると孫)は代襲相続人になることができ、遺留分が認められます。

 

相続廃除者

相続廃除とは、被相続人を虐待したり重大な侮辱を与えたりした相続人から、相続の権利を奪うことです。
相続人の非道な行動によって、相続人やその家族の平和がいちじるしく乱された場合、その相続を排除することができます。

 

相続廃除は、被相続人が家庭裁判所に申し出る方法と遺言にその旨を遺す方法があります。
家庭裁判所に申し出て、排除の理由が認められたときに相続人の資格がなくなります。

 

相続廃除により相続の権利が奪われるのは本人のみに限られます。それで、相続廃除者の子供には代襲相続が認められます。

 

 

今回は、遺留分や遺留分が認められる相続人についてみていきました。

次回は遺言書がある場合とない場合それぞれの相続の進め方を紹介したいと思います。

家族信託が必要になるケース・必要ないケース

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相続頑張るFPです。

前回は、家族信託のメリット・デメリットをみていきました。

 

この記事では、家族信託が必要になるケース・必要ないケースを紹介していきました。

 

家族信託が必要になるケース

以下で説明するようなケースに当てはまる方は、家族信託の利用を検討しましょう。

 

代々引き継いでいきたい財産がある

先祖から引き継いできた土地など、代々一族に遺していきたい財産がある場合、家族信託は非常に有効です。

 

例えば、遺言書によって土地を長男に相続することは可能です。
ですが、長男に相続させた後、長男が死亡した場合の相続人を定めることは遺言書ではできません。

 

ですから、長男が土地を相続した後、長男が遺言書を残さない場合は、その先の相続人は法定相続人によって遺産分割されます。

 

長男に子がいない場合は配偶者に、その配偶者が亡くなれば配偶者の兄弟姉妹に土地が取得される場合もありますし、長男に子がいる場合でも、兄弟がいれば遺産分割協議を行わなければならず、土地を分割したり、売却してお金に換えたりする必要がでてきます。

 

家族信託を使えば、長男が死亡した後の相続人を指定することができますので、先祖からの土地を一族で引き継いでいけます。

 

親が認知症になっても資産運用・相続税対策できる

もし、親が認知症になって、財産管理に関して判断力が十分でないとみなされた場合、土地などの不動産を売却したり、有価証券の売却を行ったりすることができなくなる可能性があります。

 

そうなった場合、成年後見制度を利用して、後見人に財産管理してもらうしかなくなります。

 

成年後見制度における財産管理は、あくまでも本人の利益のためだけに行われるものですから、財産を増やすために運用したり、相続税対策のために収益不動産に買い替えたりすることはできません。

 

ですが、家族信託の場合、受託者の判断で柔軟に財産管理することができますので、資産運用や相続税対策に有利となります。

 

障害のある子どもの生活が守れる

障害のある子どもがいる場合、親自身が認知症になってしまったら、子どもの生活を守ることが難しくなります。

 

信託契約によって、信頼できる家族や親族などを受託者、子どもを受益者に設定しておけば、子どもの生活を金銭面で守ることができます。

 

家族信託が必要ないケース

家族信託は、どんなケースでも有効というものではありません。
家族信託を行う必要がないケース、家族信託を行うことが難しいケースもありますので、ご注意ください。

 

資産が少ない

家族信託は、自分の財産の管理を、信頼できる家族に託すことができるという仕組みです。

 

売却するような不動産がないケースや、管理するほど預貯金が多くないという場合は、家族信託する理由がありません。

 

家族仲が悪い

家族信託では、特定の子どもだけが受託者となり財産管理します。
また、先祖代々の土地を先々まで相続指定することも可能です。

 

ですから、信託契約を締結する際には、特に相続に関わる家族で十分に話し合いをする必要があります。

 

このとき、兄弟仲が悪いような場合、受託者以外の兄弟が文句を言ったり、親が亡くなった後の遺産分割で揉めてしまったりします。

 

家族の中で特定の人を受託者とすると揉めてしまう場合は、任意成年後見契約を司法書士や弁護士といった専門家と締結しておいた方がよいでしょう。

 

認知症の兆候がない

本人が健康で、認知症の兆候が全くないという場合、家族信託を締結する必要性は感じないでしょう。
また本人が、自分の財産を適切に管理できていれば、家族信託は必要ありません。

 

しかし、事故や脳卒中による高次脳機能障害でも認知能力、判断能力が著しく低下することはあります。

 

リスクの考え方は人それぞれですが、信頼できる家族がいるのであれば、早めに家族信託の利用を始めるということも検討しましょう。

 

裏技として途中から家族信託に移行も可能

自分が健康で、認知症等などで判断能力が十分ではないと判断されるまでは、家族信託を始めたくないと考える方もいるでしょう。

 

そのような場合、途中から家族信託に移行することができます。

 

まず、自分が認知症等になった場合に備えて、信託財産(管理を任せたい不動産物件など)、受託者、受益者などを定めた信託契約書を作成しておきます。

 

そして、自分が認知症等になったときは、事前に依頼した司法書士や弁護士といった専門家が手続きを行い、家族信託をスタートさせるという方法です。

 

通常の家族信託は、自分が元気なうちから、財産管理を子どもなどの受託者に任せていきますが、家族信託の発効タイミングを設定し、認知症等になった後などから始めることが可能です。

 

家族信託に必要な書類

家族信託で最も重要な書類は、信託契約書です。

信託契約書には、信託の目的、財産、受託者・受益者の指定、財産の管理・運用方法など、必要な項目を記載し作成します。

さらに加えて、下記のような書類が必要になります。

 

・信託財産とする不動産の権利書
・固定資産税評価証明書
・信託目録(契約書内に記載の場合は不要)
・委託者、受託者、受益者の印鑑証明書
・委任状(専門家に手続きを依頼する場合)

 

家族信託は、代々引き継いでいきたい財産がある場合、柔軟に財産管理して欲しい場合などに有効な方法です。

 

逆に、管理してもらうような財産がない場合は必要ありませんし、特定の家族を受託者にすることでトラブルになるようでしたら、専門家に後見人を依頼する契約を締結した方がよい場合もあります。

 

家族信託は、認知症になってしまった場合の対処法ではなく、認知症等になるリスク対応する方法です。

家族信託の仕組みを理解し、まず自身に必要かどうか考えてみましょう。

家族信託のメリット・デメリット

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相続頑張るFPです。

 

自分が将来認知症になった場合の財産管理を家族に任せるために、家族信託を考える高齢者が最近多くなっているようです。

 

認知症等で、判断能力が著しく低下してしまった場合、自身で不動産などの財産を管理・処分することができなくなってしまいます。

 

そのような場合、成年後見制度を利用して、家庭裁判所が選任した成年後見人に財産管理を任せるという方法がありますが、財産の売却には家庭裁判所の判断が必要になるなどの制約を受けることになります。

 

そうした問題を回避するために、財産管理の自由度が高い家族信託を検討する方が増えてきているようです。

 

本記事では、家族信託のメリット・デメリットを解説したいと思います。

 

家族信託のメリットとは?

家族信託の最大のメリットは、柔軟な財産管理を簡単に行えるということです。

 

成年後見制度における財産管理では、資産の積極的な運用や、生前贈与といった相続税対策を行うことが難しく、家庭裁判所への確認、報告の義務もあります。

 

ですが、家族信託では、信託契約によって本人の望む通りに財産管理・運用などを受託者に任せることができますから、より柔軟な財産管理が可能となります。

 

また、遺言書の代わりとして、財産を承継する者を指定することができます。
家族信託では、信託契約書を受託者(信頼できる家族)と締結しますので、遺言書作成のような厳格な方式は必要ありません。

 

さらに、遺言書ではできない、先々の代まで財産を承継する人を指定するということも可能です。

 

そして信託契約では、受益権を承継させることも可能です。
例えば、本人が死亡した後、受益者を配偶者に変更することができますので、財産相続だけでなく、配偶者の生活を守るために財産を利用していくことができます。

 

家族信託のデメリットは?

家族信託は、認知症対策としては万能ではありませんので、デメリットもあります。

 

基本的に、家族信託は財産管理について定めた契約ですから、成年後見制度のような身上監護権は発生しません。

 

信託契約に身上監護に関する内容を含めることは可能ですが、成年後見人と同じというわけにはいきません。

 

また、家族信託の仕組みには節税効果はありません。
財産管理を行う上で、節税対策を行うことは制限されませんが、家族信託自体には節税効果はありませんので、ご注意ください。

 

そして、注意点としては、受託者の設定です。
財産を適切に管理・処分を行うことができて、信頼できる家族がいなければ、家族信託は成立しません。

 

また、特定の子どもなどを委託者に指定すると、他の子どもから不満の声が上がる場合もありますので、十分な検討が必要です。

 

 

今回は家族信託のメリット・デメリットについて解説をしました。

次回は家族信託が必要になるケースと必要ないケースをみていきたいと思います。

 

商事信託が向かないケース・注意点

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相続頑張るFPです

前回の記事では商事信託のメリットとデメリットについて解説してきました。

今回は商事信託に向かないケースについて考えてみましょう。

 

商事信託が向かないケース

認知症対策のための信託には向かない

認知症対策のために信託が活用されることがあります。

自分が認知症になったときのために、受託者に自宅の管理をしてもらったり、身の周りの世話をしてもらったりすることが目的です。

 

このケースでは、自宅不動産が信託財産となることが多いですが、商事信託では収益物件以外の不動産を信託財産とすることはできません。

そのため、認知症対策のために商事信託を活用することは現実的に難しいといえるでしょう。

 

遺産分割のための信託には向かない

信託を活用して、自由に遺産分割の設定を行なうこともできます。
しかし、商事信託の場合は、商品が決まっているため、それぞれの家族に合わせて信託設計をすることには向きません。

 

遺産分割の方法は、各家族のニーズによって様々ですので、商事信託だときめ細やかな対応をすることができません。
そのため、商事信託は、遺産分割を目的とした信託には不向きであるといえるでしょう。

 

事業承継のための信託には向かない

事業承継のために信託を活用することもできます。
ただし、商事信託の場合には、信託財産として未上場株式には原則未対応となっています。

 

最近では、事業承継対策のための商事信託を商品として扱っているところも増えてきているようですが、選択肢の少なさや設計の柔軟さに欠けるという点では、事業承継のための信託には向かないといえるでしょう。

 

商事信託を利用する際の注意点

商事信託を利用する際の注意点についても解説していきます。

 

商品の内容について良く説明を受ける

信託銀行や信託会社によって扱っている信託商品は様々です。
信託できる財産の範囲や、どのような信託設計になっているかについて良く把握するようにしましょう。

 

また、信託期間中に、信託財産の組み換えは可能かなど、状況の変化に合わせてどこまで柔軟に対応してくれるかについても説明してもらうようにしましょう。

 

商事信託のデメリットの1つは、柔軟な設計ができないところにありますので、自分の希望を叶えてくれそうな商品を取り扱っているか良く考えてから利用するようにしましょう。

 

コストについて把握する

商事信託では、イニシャルコストやランニングコストが高くなる傾向にあります。
信託を始めたものの、手数料や報酬だけで思ったより費用がかかってしまっているということもあり得ます。

 

利用する前に、毎月どれ位のコストがかかるかについてシュミレーションして、数字を把握できるようにしておきましょう。

 

受託者を比較する

商事信託の受託者は認可を受けた企業や銀行ですので、一般的には信頼できます。
しかし、信託は一度始めると長いお付き合いになりますので、自分にあった受託者を探すことが大切です。

 

ホームページを比較したり、担当者の話を実際に聞いたりして、比較検討していくことをお勧めします。

 

まとめ

商事信託は、専門知識豊富なプロが受託者となりますので、家族信託に比べて不正が起きにくいというメリットがあります。


一方で、信託の最大の特徴の1つである柔軟さに欠けるというデメリットもあります。
また、資産の最低額が決められているため、始めるためのハードルも家族信託に比べて高くなります。

 

そのため、信託を考えている方は、まず、家族信託を検討することをお勧めします。
家族信託は柔軟な信託設計を行なうことができるので、認知症対策、相続対策、事業承継対策など、自分のニーズに合った仕方で制度を設計していくことができます。


そのうえで、選択肢の1つとして商事信託を検討すると、バランスの良い判断ができると思います。

とはいえ、家族信託は比較的新しい制度ですので、未知数の部分が多いというのも実情です。


思いもよらないトラブルを避けるためにも、専門家に相談しつつ、どんな風に設計していくと良いかを考えていきましょう。

商事信託のメリット・デメリット

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相続頑張るFPです。

信託には大きく分けて2つの種類があります。商事信託と民事信託です。
民事信託の代表例は、最近話題になることも多い家族信託です。
もう一つは商事信託です。信託銀行にいくと、銀行が扱っている信託商品についてのパンフレットや広告をみかけることがあるかもしれません。

商事信託と家族信託にはどんな違いがあるのでしょうか?
商事信託のメリットやデメリットはどこにあるのでしょうか?
この点を知っておくと、自分にはどちらの信託が向いているのか判断しやすくなります。
信託を活用したいと思ったときに役立つ情報について、この記事で解説していきます。

 

商事信託とは?家族信託(民事信託)との違いは?

商事信託とは、信託銀行や信託会社が受託者(信託を引き受ける人)となって資産を管理する信託のことをいいます。
営利を目的として受託者となるため、運用の際には手数料や報酬の支払いが必要です。
商事信託を行うためには、内閣総理大臣の認可を受けなければならず、信託業法の規制を受けます。


認可を受けた公的な機関に信託の管理を任せることができるので、受託者による不正やトラブルを防ぐことができます。

 

家族信託とは受託者が違う

商事信託と家族信託の最大の違いは、受託者です。
商事信託は、信託銀行や信託会社が受託者となります。
信託銀行や信託会社は、営利目的で信託を行っているため、信託報酬や手数料の支払いが必要です。


また、商事信託の受託者となるには、免許が必要です。
家族信託は、その名の通り、信頼できる家族が受託者となります。
非営利目的ですので、報酬や手数料は自由に決めることができます。
また、営利目的ではありませんので、信託業の免許がなくても受託者になることができます。

 

家族信託とは財産管理の範囲も違う

商事信託は、各商品によって取り扱うことのできる信託財産も異なります。
営利目的で行われるため、一般的に信託財産に一定以上の規模が求められます。

未上場株式や自宅は信託財産として取り扱っていないところもあります。
一方で家族信託には、信託財産の制限は原則ありません。
未上場株式や自宅など、商事信託では扱っていない財産も信託財産とすることができます。

 

商事信託のデメリット

商事信託のデメリットは、柔軟な信託設計ができないところにあります。
利益をあげることを目的としているため、信託財産の規模が一定以上であることが求められますし、運用のためのコストもかかります。

また、金融庁の管理下に置かれるので、管理できる財産に対して多くの制約があります。
パッケージ商品として販売されることが多いので、ニーズに合わせた細かい設計をすることができません。

 

信託財産が少額だと始めることができない

商事信託では、少額の財産を信託することはできません。
最低金額が数百万円、信託会社によっては1,000万円以上といった制限が設けられることもあります。


家族信託の場合は少額からでも始められることを考えると、ある程度まとまった資産がないと始めることができない点は商事信託のデメリットの1つです。

 

信託できる財産のバラエティーが少ない

また、商事信託は信託できる財産の範囲が家族信託に比べて狭くなります。
家族信託は、原則としてなんでも信託財産とすることができます。
商事信託の信託財産は金銭がメインとなり、自宅不動産や未上場株式には、原則として未対応です。


収益用不動産も、収益が低い物件は取り扱うことができないなど、条件によっては信託できないこともあります。


このように、信託できる財産に制限があるため、自宅不動産の管理を任せたいといった身近なニーズに応えることができない点がデメリットです。

 

ニーズに合わせた自由な設計をすることができない

さらに、各信託銀行や信託会社はパッケージ商品として商事信託を扱っています。
そのため、商品設計があらかじめ決められており、委託者のニーズに合わせて設計し直すことは原則できません。資産の組み換えを柔軟に行う点でも限界があります。

 

商事信託は、金融庁の厳格な管理下に置かれていますので、預かる財産にも制約が出てきます。

 

信託を行いたい理由はそれぞれの家族によって異なります。認知症対策のために活用したい人もいれば、事業承継のために活用したい人もいます。また最近では、障害のある子どものためにという方もいます。


家族信託はかなり細かく設計することができますが、商事信託はそれができません。
それぞれのニーズに合ったきめ細やかな設計が難しいということは、商事信託の大きなデメリットであるといえるでしょう。

 

コストは高め

商事信託は営利を目的としているため、必ず信託報酬がかかります。
扱う銀行や会社、また取り扱っている商品によって報酬額は異なりますが、コストは総じて高めになっています。


信託を始めたものの、毎月かなりの額がかかり、続けることが難しくなってきたということもありえるかもしれません。

 

一方で家族信託は、契約次第でコストをゼロにすることも可能です。
商事信託は、運用のためにイニシャルコストやランニングコストがかかるので、始めるためのハードルと続けるためのハードルがどうしても高くなってしまいます。

 

商事信託のメリット

商事信託のデメリットについて幾つか取り上げてきましたが、もちろんメリットもあります。


ここでは、3つのメリットを取り上げます。

 

受託者になってくれる人がいなくても信託を始められる

信託財産の受託者となってくれる家族や親族が近くにいないときでも、商事信託を利用すれば信託を始めることができます。


免許を持っているプロなので、専門知識が豊富です。
また、金融庁の管理下にありますので、不正が起きにくいという信頼感もあります。

 

資産管理の負担を減らすことができる

また、大きなメリットの1つは、資産管理の負担を減らすことができる点です。
たとえば、不動産の賃貸経営には、賃料の管理、収支の計算、建物の維持修繕、入居率の維持や納税など様々な手間がかかります。


商事信託として収益不動産を信託した場合、信託銀行や信託会社が、これらの手間を一手に引き受けてくれます。


自分で不動産を管理するのが面倒だったり苦手だったりするときには、商事信託を活用することで、負担を軽減できます。

 

受託者死亡によるリスクを減らすことができる

商事信託の受託者は、信託銀行や信託会社といった法人です。個人とは異なり死亡することがありません。


信託では、受託者が死亡した場合、受託者が死亡してから1年が経過しても新たな受託者が選任されないときには、信託契約自体が終了してしまいます。


商事信託には、このような信託契約終了のリスクがないため、安定した運用が見込めます。


一度信託を組めば、その後はずっとお任せすることができるという安心感はメリットの1つです。

二世帯住宅の場合は適用できる?小規模宅地の特例の計算例を解説

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相続頑張るFPです。

前回に引き続き小規模宅地の特例について解説していきます。
今回は適用の判断が分かれる二世帯住宅について確認していきます。

区分登記がされていない場合


二世帯住宅で区分登記がされていない場合は一つの家とみなされます。
そのため、親世帯と子世帯で別々の暮らしをしていたとしても同居をしているものとみなされますので子世帯が財産を相続した場合、小規模宅地の特例を適用することが可能です。

二世帯住宅であっても区分登記がされていない場合は一つの家とみなすことができると言う点は相続税の評価において非常に重要ですので覚えておくとよいでしょう。


区分登記がされている場合


二世帯住宅に親世帯と子供世帯が二世帯住宅に居住している場合、それぞれが区分登記をしているケースがあります。
例えば1階部分を親世帯が居住し、2階部分を子供世帯が居住しているようなケースです。
この場合、子供は被相続人が所有している1階部分には同居していたわけではありません。
また、子供は持ち家を所有しているということになりますので小規模宅地の特例を利用することが、できません。
このように区分登記がされているかどうかによって小規模宅地の特例を利用できるかどうかが変わりますので注意が必要です。

 

小規模宅地の特例による相続税の差額


次に二世帯住宅で小規模宅地の特例をできるかどうかによって相続税がどれくらい異なるかシミュレーションをしてみましょう。

【事例】
被相続人A(配偶者は既に他界)
相続人:長男B(相続人は一人)
自宅土地の評価額:5,000万円(250㎡)
自宅土地以外の財産:8,000万円

 

小規模を宅地を利用した場合


小規模宅地を利用した場合の相続財産は自宅土地以外の財産が8,000万円。
自宅の土地は5,000万円の80%減となりますので、1,000万円の評価となり、合計は自宅土地以外の財産とあわせると9,000万円となります。
被相続人Aの相続人は長男B一人ですので、基礎控除は3,600万円(3,000万円+600万円)ですので相続税の対象となる財産は5,400万円。
相続税は920万円となります。

 

小規模宅地の特例を適用できない場合

次に小規模宅地の特例を適用できない場合のシミュレーションを行ってみましょう。
相続財産は自宅土地5,000万円と自宅土地以外の財産が9,000万円ですので、課税対象となる相続財産は1億円4,000万円です。
基礎控除が3,600万円差し引かれるため、相続税の課税対象となるのは1億400万円。
この場合、相続税は2,460万円となり、同じ財産でも小規模宅地の特例を適用することで大きく差があることがわかります。
今回のケースでは小規模宅地の特例を利用できるかどうかで1,540万円も実際支払う税金に差が生まれるのです。
二世帯住宅は比較的大きな土地を使うことも多いため、相続税に大きな影響を及ぼします。
二世帯住宅は区分登記の有無などによっても適用可否がことなりますので、二世帯住宅の購入を予定している場合はどのように登記するかもよく考えて行うようにしましょう。

 

小規模宅地の特例の適用要件をしっかり確認しておくことが大切


2回にわたって小規模宅地の特例について解説しました。
小規模宅地の特例は相続税に関する特例のなかでも利用者が多く節税効果も大きい特例です。
小規模宅地の特例を適用するかどうかで実際に支払う相続税には大きく差が生まれますので要件をしっかり理解しておく必要があるでしょう。
特に二世帯住宅に住まれている場合は登記の仕方によって適用できるかどうか分かれる場合があります。
小規模宅地の特例を適用するためには二世帯住宅を建築する時に特例の適用要件についても理解しておく必要があります。
小規模宅地の特例は節税効果も大きいため、しっかりと要件を確認して適用ができないと言う事態にならないようにする必要があります。

最重要!小規模宅地の特例について解説

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相続頑張るFPです。

今回は相続税を計算するうえで欠かせない知識である「小規模宅地の特例」について解説したいと思います。
小規模宅地の特例には同族会社の事業用宅地に適用できる特定同族会社事業用宅地や貸付事業を行っている場合に利用できる貸付事業用宅地などもありますが、今回は最も一般的に利用されている特定居住用宅地について解説します。

小規模宅地の特例とは


小規模宅地の特例とは被相続人が住んでいた土地や事業を行っていた土地について相続税の優遇がある制度です。
小規模宅地の特例は残された遺族の生活を維持するために生活の基礎となる住宅や事業に使っている土地の相続について相続税を軽減する目的があります。
その中でも特定居住用宅地とは被相続人などの居住用に利用されていた土地を相続した際に適用することができる制度です。
特定居住用宅地として適用することで330㎡まで評価額が80%減額となります。自宅が財産の大部分を占めるケースも多いため、非常に効果の大きい制度となっています。次に小規模宅地の特例の適用要件を解説します。

小規模宅地の特例(特定居住用宅地)の適用要件


小規模宅地の特例はどのような要件を満たせば適用できるのでしょうか。小規模宅地の特例の要件を確認しておきましょう。
小規模宅地の特例は被相続人が居住用に利用していた土地を適用することができます。
適用面積は330㎡までです。330㎡を超えていても全く適用されないわけではなく、330㎡を現度として特例を適用することが可能です。
特例を適用する土地は相続税の申告期限まで相続人が保有しておく必要がありますので、相続後すぐに売却しないように注意しましょう。


小規模宅地の特例の注意点


小規模宅地の特例には注意点があります。注意点もしっかり確認することで、有効に制度を活用することが可能です。

別の持家があると適用できない


自宅を相続する場合、まずは配偶者が相続してそのあと子供が相続するというパターンが一般的です。
子供に相続するいわゆる二次相続では子供が同居していないケースも多くあります。
子供などの相続人に別の持家がある場合、小規模宅地の特例を利用することができません。
小規模宅地の特例の利用を検討している方はあえて持家を買わずに賃貸に住むということも選択肢のひとつです。


老人ホームに入居した場合


老人ホームに入居した場合も注意が必要です。
老人ホームに入居した場合でも同一生計の配偶者が引き続き居住している場合や空き家となっていても持ち家を持たない相続人が相続した場合は小規模宅地の特例を適用することが可能です。
注意が必要なのは空き家となってしまった自宅を少しでも収益を稼ごうと他人に賃貸した場合です。
賃貸に出してしまった場合には小規模宅地の特例を適用することができませんので、賃貸で得られる収益と小規模宅地の特例を利用するのではどちらが得になるかを慎重に検討する必要があります。

 

相続税の申告が必要


小規模宅地の特例は相続税の申告が必要です。
そのため、小規模宅地の特例を利用することで結果として相続税がかからない場合でも相続税の申告は忘れずに行う必要があります。
相続人がかからないからといって申告が不用となるわけではないので注意しましょう。

 

小規模宅地の特例は必ず適用したい重要な制度

小規模宅地の特例は多くの人が利用する制度です。
また、自宅の土地が330㎡まで80%減額となるため、効果も非常に大きい制度です。
小規模宅地の特例を利用する場合は相続税の申告が必要ですので、忘れずに適用できるように申告しましょう。
また、老人ホームに入居後に賃貸した場合など適用できなくなるケースもありますので、適用要件をしっかり確認しておくことが重要です。

二次相続をふまえた財産配分はどうしたらいい?

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相続頑張るFPです。
今回は前回に引き続き二次相続について解説します。

当記事では二次相続をする際にどれくらい相続税がかかるかについて実際に計算して解説したいと思います。

この記事を最後までお読みいただくと同じ財産でも配偶者がどれくらい相続するかによって一次相続と二次相続で大きな差が生じるということがお分かりいただけます。

二次相続をふまえたシュミレーション

以下の事例について一次相続、二次相続をふまえた相続税のシミュレーションについて見てみましょう。

夫A(財産1億円)
妻B(財産5,000万円)
長男C
長女D

一次相続で配偶者が全財産を相続した場合

配偶者が財産を相続した場合、配偶者控除を適用することができます。
配偶者控除は1億円6,000万円までの相続であれば非課税となります。
配偶者は財産を形成するために、本人を支えていることが多く、財産形成に貢献していることや、年齢が近いことで同じ財産に対して短期間に何回も相続税がかかることを避けるため配偶者には大きな控除が用意されているのです。
配偶者控除を利用することにより、Aさんの相続では全財産を配偶者が相続した場合、相続税はかかりません。
配偶者が相続すれば相続税がかからないのであれば配偶者が相続した方が得なのではないかと思った方も多いのではないでしょうか。
しかし、二次相続もトータルで計算するとかえって相続税が高くなることもあるのです。
配偶者は一次相続で全財産を相続しているため、二次相続では配偶者の元々の財産である5,000万円+夫から相続する1億円が相続財産となるため合計1億5,000万円の相続財産となります。
1億5,000万円の財産を子供二人で相続した場合の相続税は合計で約1,840万円になります。

このように一次相続で配偶者控除を最大限活用するために、配偶者に財産を配分したとしても二次相続では相続税がかかってしまいます。

一次相続で法定相続割合で配分した場合

次に一次相続では法定相続割合通りに配分した場合のシミュレーションを見ていきましょう。

一次相続で夫Aが亡くなった際に法定相続割合で分割した場合の財産取得額は以下の通りです。
妻B:5,000万円(2分の1)
長男C:2,500万円(4分の1)
長女D:2,500万円(4分の1)

法定相続割合通りに配分した場合の1次相続での相続税は630万円です。

二次相続では元々あった妻Bの財産5,000万円に夫Aから相続した5,000万円が加算され、相続財産は1億円となりますので、以下の割合で配分されます。

長男C:5,000万円(2分の1)
長女D:5,000万円(2分の1)

このケースでは二次相続の相続税は770万円です。
法定相続割合通りに一次相続、二次相続ともに配分した場合の相続税の総額は1,400万円(630万円+770万円)となります。
一次相続で全財産を配偶者に相続させた場合の相続税は1,840万円となりますので配偶者控除を最大限活用するよりも法定相続割合通りに配分した方が相続税の観点では有利と言えるでしょう。
配偶者控除を最大限利用することは一見有利に感じられますが、二次相続もふまえて検討する必要があるのです。

一次相続・二次相続の配分方法で相続税は大きく変わる


二次相続をふまえた財産の配分についてシミュレーションを行いました。
実際に計算して見ると一次相続と二次相続での配分によって同じ財産でも相続税額が大きく変わることがわかります。
一次相続では控除額の大きい配偶者控除が利用できるため、相続税がかなり軽減されます。
しかし、配偶者控除を最大限利用しようとすると二次相続でより多くの相続税がかかってしまうため、結果的にトータルでの相続税負担が大きくなってしまうことがあります。
そのため、相続財産の配分を検討する際は一次相続と二次相続をトータルで考えて配分を検討する必要があります。

二次相続ってなに?二次相続を踏まえた相続について解説します。

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相続頑張るFPです。
今回は二次相続を踏まえた相続について解説したいと思います。

二次相続についてはしっかり理解しておかないと同じ財産を相続していゆにも関わらず相続税が大きくなってしまいます。
それでは二次相続について解説していきます。

 

二次相続とは


二次相続とは夫婦どちらかが先に亡くなって次に配偶者が亡くなることを言います。
例えば、以下のような家族がいたとします。

夫A(財産1億円)
妻B(財産5,000万円)
長男C
長女D

夫Aが先に亡くなった場合の相続を一次相続といいます。一次相続ご発生した際の法定相続割合と財産の取得金額は以下の通りです。

妻B:2分の1(5,000万円)
長男C:4分の1(2,500万円)
長女D:4分の1(2,500万円)

次に妻Bが亡くなった場合に長男Cと長女Dに相続することを二次相続といいます。

二次相続で財産を相続した際の法定相続割合と財産の取得金額は以下の通りです。

長男C:2分の1(5,000万円)
長女D:2分の1(5,000万円)


なぜ二次相続に注意が必要か

二次相続にはなぜ注意が必要なのでしょうか。注意点を具体的に見ていきましょう。

基礎控除が少なくなっている

相続税の基礎控除は3,000万円×法定相続人×600万円で計算します。
先ほどの例では一次相続の時点では法定相続人は3人ですので基礎控除は4,800万円(3,000万円×3人×600万円)です。
しかし、二次相続の際には相続人が一人減っていますので基礎控除は4,200万円(3,000万円×2人×600万円)となります。
基礎控除が少なくなってしまうことで同じ財産額でも実際に支払う相続税は高くなってしまうのです。

一次相続で取得した財産が増えている

二次相続が発生した際には一次相続で取得した財産が増えていることになります。
先ほどのケースでは妻Bの財産は元々5,000万円でしたが夫Aの財産を5,000万円取得したことにより1億円になっています。
このように二次相続では一次相続で取得した財産が増えているため、より多くの相続税が課される可能性が高くなってしまいます。
配偶者控除があるため、多くの財産を配偶者が受け取ることで一次相続では相続税負担が軽くなります。
しかし、一次相続で配偶者が受け取る財産が多くなりすぎると二次相続でかえって負担が大きくなることもあるのです。

 

相続人間での争いにも発展しやすい


二次相続では相続人間の争いにも発展しやすいと言われています。
その理由は調整役となる親がもういないということがあげられます。
一次相続では片方の親が亡くなっていますが、どちらかの親が残っていますので、兄弟姉妹間での争いには発展しづらい状況です。
しかし、二次相続の際には兄弟姉妹間のみで財産の配分を決めなければいけません。
調整役となる親がいないことで思わぬ争いに発展することもありますので、二次相続の場合は相続税だけでなく配分の面でも注意が必要です。

相続について検討する際は二次相続も踏まえて検討する必要がある

二次相続の注意点について解説しました。二次相続は一次相続の際よりも多く相続税がかかることが多くあります。
その理由として相続人が少なくなることで基礎控除が少なくなることがあげられます。
もうひとつの理由は二次相続では一次相続で財産が増えていることがあげられます。一次相続で配偶者が財産を多く相続した場合、二次相続の際に相続税が多くかかってしまいますので一次相続の財産配分は二次相続もふまえて相続する必要があるでしょう。
また、二次相続では兄弟姉妹間で争いに発展する可能性も高くなりますので、配分については慎重に検討する必要があるでしょう。
次の記事では相続税の観点から一次相続と二次相続をどのように配分すればよいかくわしく解説したいと思います。

自筆遺言がトラブルのもとに?自筆遺言の注意点を解説します!

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 相続頑張るFPです。

 

終活と言えば遺言を書くことと思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。

そのなかでも、多くの方が「自筆証書遺言」を書かれることと思います。

 

遺言は以下の3種類があります。

①自筆証書遺言

②公正証書遺言

③秘密証書遺言

 

公正証書遺言とは公証役場で公証人立ち合いのもと内容確認のうえ作成される遺言です。

秘密証書遺言とは公証人に内容を見せずに遺言があることを証明してもらう遺言の作成方式です。

 

一方の自筆証書遺言とはその名の通り、自分で遺言を作成する方式で、公証役場に行く等の手続は必要がありません。

 

その他のメリットには、以下のようなものがあげられるようです。

 

自筆証書遺言の最大のメリットは、遺言書の内容を誰にも知られないことです。

公正証書遺言の場合、公証人や作成に立ち会う証人にその内容が知られてしまいますが、自筆証書遺言の場合は誰にもその内容を知られる心配はありません。

 

遺言書自体も何度も作成することができるため、自筆証書遺言であれば、誰にどの財産を渡すのか、考えが変わるたびに簡単に作り直すことができます。

 

引用元:遺言書を作るためのかかる費用の相場はどのくらい?専門家に依頼する公正証書や必要書類の交付手数料などを徹底解説|ベンチャーサポート法律事務所

 

上記のように手軽に作成できるため、自筆証書遺言を作成される方も多くいますが、自筆証書遺言には注意点があります。

次に自筆遺言の注意点を解説していきます。

 

注意点①せっかく書いても無効になるケースがある

自筆証書遺言を作成する場合、様々な要件が民法で定められています。

要件がそろっていない遺言は無効となりますので、注意が必要です。

例えば、自筆証書遺言には作成した日付を記載しておく必要があります。

日付の記載を忘れてしまった場合、遺言が無効となってしまいます。

法律上は無効となった遺言が発見された場合、その遺言により有利になる相続人は「無効であっても、被相続人の考えはわかるため、遺言の内容を採用するべき」と主張し、不利になる相続人は「作成した日付がわからないため、最終的な意思であるかどうかわからない」と主張するケースもあります。

つまり、中途半端な遺言があることによってより相続が複雑になるケースもあるのです。

自筆証書遺言を作成する際は形式的な要件をしっかり整えて作成する必要があります。

 

②解釈が分かれるケースがある

自筆証書遺言の場合、自分自身で文章を作成します。

遺言の作成に慣れていない方が文章を作成すると解釈が分かれる遺言になる可能性があります。例えば、「A銀行の預金は長男へ相続させ、B銀行の預金は次男へ相続させる」という遺言があったとします。

遺言作成当時はA銀行・B銀行ともに1,000万円であったとしても亡くなった際に全てA銀行に移っていることもあります。

この場合、長男が2,000万円の預金をすべて相続するのが正しいのでしょうか。

遺言を文字通り読み解くと長男が預金を全て相続することになりますが、遺言者の意思がそうではなかったことは明らかです。

このようなケースでは相続にくわしい弁護士等の専門家が作成する場合、「金融機関に預けている預貯金は長男に2分の1・次男に2分の1の割合で相続させる」など、遺言作成後に預け替え等があっても、不都合が起こらないように遺言を作成します。

自筆で遺言を作成する場合、このような点にも配慮して作成する必要があるでしょう。

 

③財産を特定できない書き方となっている場合がある

不動産等の財産を相続させる場合、どの財産であるか明確に示す必要があります。例えば、「自宅を長男に相続させる」と遺言に記載したケースで、遺言者が最終的には有料老人ホームに入居していた場合などでは、自宅がどれなのかが不明確です。

不動産等の財産を遺言に記載する場合は地番等を記載し、どの財産を誰に相続させようとしているのかを明確に示しておく必要があります。

 

自信が無い場合は専門家に相談を

自筆証書遺言は気軽に作成できるため、検討される方も多いでしょう。

しかし、目的を果たせない遺言を作成してもかえって相続人にとって迷惑になってしまうケースもあります。

遺言を作成するためには民法の複雑なルールを理解して作成する必要があります。

ご自身で遺言を作成する自信がない場合には弁護士等、相続にくわしい専門家に依頼するとよいでしょう。