商事信託が向かないケース・注意点

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相続頑張るFPです

前回の記事では商事信託のメリットとデメリットについて解説してきました。

今回は商事信託に向かないケースについて考えてみましょう。

 

商事信託が向かないケース

認知症対策のための信託には向かない

認知症対策のために信託が活用されることがあります。

自分が認知症になったときのために、受託者に自宅の管理をしてもらったり、身の周りの世話をしてもらったりすることが目的です。

 

このケースでは、自宅不動産が信託財産となることが多いですが、商事信託では収益物件以外の不動産を信託財産とすることはできません。

そのため、認知症対策のために商事信託を活用することは現実的に難しいといえるでしょう。

 

遺産分割のための信託には向かない

信託を活用して、自由に遺産分割の設定を行なうこともできます。
しかし、商事信託の場合は、商品が決まっているため、それぞれの家族に合わせて信託設計をすることには向きません。

 

遺産分割の方法は、各家族のニーズによって様々ですので、商事信託だときめ細やかな対応をすることができません。
そのため、商事信託は、遺産分割を目的とした信託には不向きであるといえるでしょう。

 

事業承継のための信託には向かない

事業承継のために信託を活用することもできます。
ただし、商事信託の場合には、信託財産として未上場株式には原則未対応となっています。

 

最近では、事業承継対策のための商事信託を商品として扱っているところも増えてきているようですが、選択肢の少なさや設計の柔軟さに欠けるという点では、事業承継のための信託には向かないといえるでしょう。

 

商事信託を利用する際の注意点

商事信託を利用する際の注意点についても解説していきます。

 

商品の内容について良く説明を受ける

信託銀行や信託会社によって扱っている信託商品は様々です。
信託できる財産の範囲や、どのような信託設計になっているかについて良く把握するようにしましょう。

 

また、信託期間中に、信託財産の組み換えは可能かなど、状況の変化に合わせてどこまで柔軟に対応してくれるかについても説明してもらうようにしましょう。

 

商事信託のデメリットの1つは、柔軟な設計ができないところにありますので、自分の希望を叶えてくれそうな商品を取り扱っているか良く考えてから利用するようにしましょう。

 

コストについて把握する

商事信託では、イニシャルコストやランニングコストが高くなる傾向にあります。
信託を始めたものの、手数料や報酬だけで思ったより費用がかかってしまっているということもあり得ます。

 

利用する前に、毎月どれ位のコストがかかるかについてシュミレーションして、数字を把握できるようにしておきましょう。

 

受託者を比較する

商事信託の受託者は認可を受けた企業や銀行ですので、一般的には信頼できます。
しかし、信託は一度始めると長いお付き合いになりますので、自分にあった受託者を探すことが大切です。

 

ホームページを比較したり、担当者の話を実際に聞いたりして、比較検討していくことをお勧めします。

 

まとめ

商事信託は、専門知識豊富なプロが受託者となりますので、家族信託に比べて不正が起きにくいというメリットがあります。


一方で、信託の最大の特徴の1つである柔軟さに欠けるというデメリットもあります。
また、資産の最低額が決められているため、始めるためのハードルも家族信託に比べて高くなります。

 

そのため、信託を考えている方は、まず、家族信託を検討することをお勧めします。
家族信託は柔軟な信託設計を行なうことができるので、認知症対策、相続対策、事業承継対策など、自分のニーズに合った仕方で制度を設計していくことができます。


そのうえで、選択肢の1つとして商事信託を検討すると、バランスの良い判断ができると思います。

とはいえ、家族信託は比較的新しい制度ですので、未知数の部分が多いというのも実情です。


思いもよらないトラブルを避けるためにも、専門家に相談しつつ、どんな風に設計していくと良いかを考えていきましょう。