令和5年度税制改正大綱解説③ ~相続時精算課税制度の変更点~

相続頑張るFPです。

前回に引き続き税制改正大綱について解説していきたいと思います。今回は大きな変更が予定されている相続時精算課税制度について解説します。

現在の相続時精算課税制度

現在の相続時精算課税制度は60歳以上の両親または祖父母から20歳以上の子または孫に生前贈与をした際に利用することができる制度です。

相続時精算課税制度を選択すれば最大2,500万円まで、贈与税としてではなく、相続税の対象として課税されます。2,500万円を超える場合、税率20%で一律課税されます。

相続時精算課税制度を利用することで贈与時の価額で課税されるため、将来値上がりが期待できる自社株式や収益を生む不動産などを贈与することで資産移転をしながら相続税対策をできるというメリットがあります。

一方で、相続時精算課税制度を利用することで、暦年贈与ができなくなることや少しの贈与でもこの制度を利用すると申告の手続きが必要となることなどがデメリットとなっており、利用者数は少なかったのが現状です。

税制改正の内容

今回の税制改正大綱では相続時精算課税制度利用促進のために、大幅に改正されました。今回の改正で最も大きな改正点といえるのが年110万円の非課税枠の新設です。

これまで、相続時精算課税制度には非課税枠というものがなく、少額の贈与でも贈与税の申告手続きが必要でした。贈与税の申告が必要となるため、面倒な手続きをしたくないと考える人も多く利用者が増えなかったということが考えられます。

そこで、今回の税制改正では年110万円の非課税枠が新設されました。暦年贈与と同じく110万円以内であれば、贈与税はかからず、相続財産にも加算されないため、相続税対策として有効な手段となりました。

ただし、暦年贈与と相続時精算課税制度は選択制であり、両方同時には使えないことは変わっていません。相続時精算課税制度の年間110万円の基礎控除はあくまで、相続時精算課税制度の2,500万円までの枠の範囲であり、2,500万円を超える贈与が行われた場合、一律20%の贈与税がかかる点は変わっていませんので注意しましょう。2,500万円を超える贈与を行う可能性が低い場合は相続時精算課税制度を選択してもよいでしょう。

今回の改正により相続時精算課税制度は大幅に利用者にとって利用しやすいものとなったため、利用者の増加が見込まれます。政府も本制度の活用を推進して富裕層の高齢世帯から現役層への資産移転をしたいと考えているのでしょう。