配偶者居住権ってなに?新設された制度について解説します。

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相続頑張るFPです。

 

今回は新設された配偶者居住権の概要について解説します。

 

配偶者居住権とは

配偶者居住権とはその名の通り、配偶者が居住する権利です。

被相続人の配偶者が相続開始時に被相続人所有の住居に同居していた場合、その住居を他の相続人が取得しても配偶者が引き続き使用することができる権利です。

 

配偶者居住権は原則終身となりますが、期間を定めることも可能です。
期間を定めた場合、期間の延長や更新はできません。

 

配偶者は配偶者居住権を根拠に自宅に住み続けることができますが、住宅の保全に必要な修繕費や固定資産税等を負担する必要があります。

 

なぜ配偶者居住権が必要か

配偶者居住権はなぜ必要となったのでしょうか。その理由は財産に占める自宅の割合が多かった場合に、法定相続通りに財産を配分することで配偶者の生活が脅かされるケースが多かったためです。

例えば、以下のようなケースです。

夫A:相続財産8,000万円(うち自宅の評価6,000万円・預貯金2,000万円)

妻B:預貯金2,000万円

長男C

長女D

 

このようなケースでは法定相続割合は妻Bが2分の1、長男Cと長女Dが4分の1ずつとなります。

夫Aは自宅が財産の大部分を占めています。そのため、妻Bが自宅を相続した場合、元々保有している預貯金を長男Cと長男Dに渡す必要があります。

妻Bが法定相続割合通り相続した場合、4,000万円となりますので、自宅の評価額との差額である2,000万円を自身で保有していた預貯金を取り崩して長男Cや長女Dに渡す必要があります。

こうなると妻Bの預貯金は0円になってしまい、老後の生活資金に不安を残すこととなるでしょう。

今回は相手方が実の子どもというケースでしたが、相手方は実の子どもとは限りません。子どもがいない夫婦の場合は相手方が兄弟や甥・姪になるケースもありますので、より配偶者の生活基盤確保が重要となるケースもあります。

 

配偶者居住権の評価

配偶者居住権は原則、同居していた配偶者が亡くなるまで住み続ける権利ですが、全く評価額が存在しないわけではありません。所有権よりも低い評価で配偶者居住権を確保することで、配偶者の生活を確保しようとする制度です。

配偶者居住権の評価は土地や建物の相続税評価から建物の存続年数、配偶者居住権の存続年数、存続年数に応じた民法の法定利率によって算出することができます。

建物の存続年数とは建物の構造等によって耐用年数が定められています。耐用年数ー築年数が建物の存続年数です。建物が古い場合は耐用年数が0年となる場合もあります。

配偶者居住権の存続年数とは即ち亡くなるまでの期間を指しますが、配偶者がいつ亡くなるかはわからないため、平均余命で算出します。

平均余命とは平均寿命とは違い、その年まで生きた人が平均あと何年生きられるかを算出したものです。例えば、90歳女性の平均余命は5.56年となります。

 

配偶者居住権の評価の計算は非常に複雑です。評価の概要についてある程度理解していただいて、実際の計算は税理士等の専門家に依頼することをオススメします。

配偶者居住権は配偶者の生活を保護するための制度

今回は新設された配偶者居住権について解説しました。
配偶者居住権とは配偶者の生活を保護するために設けられた制度です。

日本では財産のうち自宅が大部分を占める方も多くいます。自宅を配偶者が相続した場合、自分の預貯金を取り崩して自宅を相続することになってしまい、配偶者の今後の生活が脅かされることになっていました。

しかし、新設された配偶者居住権を活用することで、預貯金を取り崩さすに、配偶者が終身自宅に住み続けることができます。自宅を配偶者が相続する場合は利用を検討してみるとよいでしょう。

思わぬ落とし穴も・・・配偶者控除の注意点

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相続頑張るFPです。

今回は配偶者控除の注意点を解説します。

配偶者控除を適用するためには相続税の申告が必要

配偶者が相続した際に適用できる配偶者控除は1億6,000万円または法定相続割合までは非課税で相続できる制度です。

配偶者控除を適用する際に覚えて置きたいことは配偶者控除は「相続税の申告」をすることで初めて適用することができるということです。

相続税における最も基本的な控除は基礎控除です。基礎控除は全ての人に適用できる控除で、3,000万円×法定相続人×600万円が非課税となります。

基礎控除は申告をしなくても適用することが可能です。そのため、財産の額が基礎控除の範囲内であれば、相続税がかかることはありませんので、相続税の申告をする必要が無いのです。

しかし、配偶者控除は申告することが適用の要件となっていますので、配偶者控除を適用した結果相続税が0になる場合でも必ず申告するようにしましょう

 

二次相続に注意する

配偶者控除を適用する際に必ず気にしておかないといけないのは二次相続です。

夫婦間で先に起こった相続を一次相続、次に起こった相続を二次相続といいます。

相続人が配偶者と子どもの場合、配偶者がまだ残っている一次相続は配偶者控除を適用でき、基礎控除として加算できる人数も一人多いため、そこまで負担は多くならないでしょう。

一次相続では配偶者控除を適用することで、負担を大きく減らすことができます。しかし、配偶者控除を最大限活用することで、二次相続の負担が大きくなってしまい、トータルでの相続税が高くなってしまう可能性があるのです。

次に、配偶者控除を活用した場合の相続税のシミュレーションをしてみましょう。

配偶者控除を適用した場合のシミュレーション

法定相続割合通りに相続した場合と配偶者控除を最大限活用した場合で二次相続を含めた相続税がどれくらいになるのか、以下の事例で確認してみましょう。

【事例】

夫の相続財産:1億5,000万円

妻の相続財産:1億5,000万円

相続人:配偶者と子ども二人

法定相続割合通り相続する場合

まずは法定相続割合通り相続するケースをみて行きましょう。

法定相続割合通り相続する場合の相続財産は配偶者が2分の1、子ども二人が4分の1ずつです。

夫が先に亡くなった場合、妻は2分の1となる7,500万円。子ども二人が相続する財産は3,750万円ずつです。一次相続の相続税は748万円となります。

二次相続では妻が元々保有していた1億5,000万円と夫から相続した7,500万円をあわせて合計22,500万円。子ども二人が1億1,250万円ずつ相続します。

二次相続での相続税は4,090万円となりますので一次相続と二次相続の合計は4,838万円(748万円+4,090万円)となります。次に配偶者控除を最大限活用

した場合の二次相続について確認していきましょう。

配偶者控除を最大限活用した場合

配偶者控除は1億6,000万円まで非課税で配偶者が相続できるため、配偶者控除をを最大限活用し、全財産を妻が相続した場合、一次相続では相続税は0円になります。

二次相続では夫の財産を相続した妻の財産は3億円。子ども二人が1億5,000万円ずつ相続した場合の相続税は6,920万円です。

このように配偶者控除を最大限活用することで、二次相続を含めたトータルの相続税は高くなってしまうこともあるのです

配偶者控除は二次相続もふまえて慎重に検討を

配偶者控除は夫婦間で相続する際の控除額が非常に大きいため、是非活用したい制度です。

しかし、配偶者控除を最大限活用するために配偶者が相続する割合を大きくし過ぎると、二次相続での負担が大きくなってしまい、トータルでの相続税がかえって増えてしまうこともあります。

配偶者の生活資金に余裕があるのであれば、トータルでの相続税を少なくするために、配偶者が相続する財産を少な目にすることを検討してみても良いでしょう。

1億6,000万円まで非課税!?配偶者控除について解説

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相続頑張るFPです。

今回は最大1億6,000万円まで非課税となる配偶者控除について解説します。

 

配偶者控除とは?

まずは配偶者控除の概要を確認しておきましょう。

配偶者控除とは一言で言うと配偶者が相続する際に相続税が優遇される制度です。

優遇額は相続財産1億6,000万円または配偶者の法定相続分までは非課税となるというもの。

つまり、被相続人の財産が1億6,000万円以内であれば、全財産を配偶者が相続しても、相続税がかかることは無いということです。

また、法定相続分までは非課税となりますので、相続財産が20億円ある場合は、10億円相続をしても非課税になるということです。

配偶者には非常に大きな優遇があることがわかりますね。何故配偶者にはこれほど大きな優遇が用意されているのでしょうか。次に配偶者が配偶者控除で優遇されている理由を確認していきましょう。

 

何故配偶者は優遇される?

配偶者がここまで優遇されるのは二つの理由があります。その理由を確認していきましょう。

夫婦二人で築きあげたケースが多い

配偶者控除の優遇が大きい理由の一つ目は、財産は夫婦二人で築き上げたケースが多いと言う事です。

収入を得ていたのは夫婦のうち一人であったとしても、配偶者は家庭内で支えあっているものです。

二人で築き上げた財産を相続することに税金を課すということに違和感があるため、配偶者が相続する場合の相続税は優遇されているのです。

配偶者は年齢が近いことが多い

二つ目の理由は配偶者は比較的年齢が近いと言うことです。年齢が近いため、配偶者が相続した後に、すぐに次の相続が発生する可能性も高いということです。

配偶者が相続してすぐに次の相続が発生した場合、同じお金に対して短期間ですぐに課税することになってしまいます。このようなことを避けるために配偶者の相続税は優遇されていると言われています。

配偶者控除を適用する条件

配偶者控除を適用するためには条件があります。配偶者控除を適用するための条件を確認してみましょう。

適用できるのは法律上の配偶者のみ

配偶者控除を適用できるのは法律上の配偶者のみです。いわゆる内縁関係にある配偶者は適用することができません

婚姻期間に条件はありませんので、配偶者控除を適用する場合には婚姻届けを提出し、法律上の配偶者になっておくことが必要です。

原則期限内に相続税の申告をする

配偶者控除を適用する際には原則期限内に相続税の申告を行う必要があります。相続税の申告期限は相続が発生したことを知った日から10ヶ月以内。

相続税の申告をするためには戸籍を収集したり、相続財産の評価を証明する書類を収集したりと様々な準備を行う必要があります。

10ヶ月というと余裕があるように思われるかもしれませんが、実際は短い期間で準備をする必要がありますので、早めから準備をするようにしましょう。

また、配偶者控除を適用するためには相続税の申告をする際に「配偶者の税額軽減の計算書」を提出する必要があります。相続税の申告について、ご自身で行う事が難しい場合は税理士に相談するようにしましょう。

申告期限に間に合わなかった場合

配偶者控除を適用する場合には原則期限内に申告をする必要があります。

しかし、相続人間で争いが発生するなど、どうしても配分が決まらずに申告期限内に相続税の申告をすることができない場合もあるでしょう。

止むを得ず期限後に申告をすることになってしまった場合は、「申告期限後3年以内の分割見込み書」を提出することで期限後の申告であっても配偶者控除を適用することができます。

ただし、申告期限後3年以内に配分を決定し、配分決定後4カ月以内に申告をする必要があります

申告期限に間に合いそうにない場合は忘れずに申告期限後3年以内の分割見込み書を忘れずに提出するようにしましょう。

不動産を活用した相続税対策における注意点と対策方法とは?

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相続頑張るFPです。

今回は不動産を活用した相続税対策を行う際の注意点について解説したいと思います。

 

注意点①不動産は分割が難しい財産

不動産を活用した相続税対策の注意点一つ目は不動産は分割が難しいという点です。相続人が複数いる場合は不動産の分割を巡って相続人間で争いに発展することが多くあります。

例えば、相続人が子ども二人で財産が現金5,000万円と評価額2億円の一棟マンションだったとします。

このケースではどちらかがマンションを相続すると、相続する財産に大きく差が出てしまいます。不動産は共有することも可能ですが、共有すると売却等の意思決定で意見が食い違うと実行できないこともあり、できれば共有は避けた方がよいでしょう。

対策としては、一つの大きな不動産を購入するのではなく、複数の不動産に分けて購入すると言う方法が考えられます。例えば、相続人が子ども二人の場合は2億円の不動産を一つ購入するのではなく、1億円の不動産を2つ購入しておくとよいでしょう。

また、どちらがどの不動産を相続するかで揉めることもありますので、遺言を作成し、配分を明確にしておくことをオススメします。

注意点②不動産投資はリスクがある

自宅以外の不動産を購入して、人に貸す不動産投資にはリスクがあります。どのようなリスクがあるのか具体的に確認しておきましょう。

空室リスク

不動産は人に貸すことで収入を得ることができます。しかし、常に借り手がいるとは限りません。需要の無い不動産を購入してしまうと、借り手が付かず空室になってしまう可能性もあります。空室状態が長く続いてしまうと、固定資産税や修繕費等の経費がかさみ、相続税の節税額以上の赤字となってしまう可能性もあります

不動産を空室にしないようにするには、購入時の需要調査や、物件の魅力を保つために適切なメンテナンスを行う必要があります。

金利上昇によるリスク

融資を受けて不動産投資をする場合、金利上昇のリスクがあります。現在は超低金利が続いており、金利負担は比較的少ない時代ですが、今後金利が上昇していく可能性も0ではありません。

1億円の借入をした場合、金利が1%であれば、年間の金利コストは100万円ですが、3%になると年間の金利コストは300万円となります。

融資を受けて不動産を購入する場合は、万が一金利が上昇しても対応できるように余裕を持った返済計画を立てることが重要です。

天変地位でダメージを受けるリスク

不動産は地震や台風等の天変地位や隣家の失火等ででダメージを受ける可能性があります。いくら慎重な計画を立てていても天変地位等の損害は誰にも予想できないものです。

建物が大きく損傷してしまうと、相続税の節税額以上の大きな損失となることもあるでしょう。天変地異に対しては地震保険等の損害保険を契約して対策を講じることが重要です。

 注意点③納税資金を確保する必要がある

相続財産の中で不動産が多くの割合を占めると相続税を支払うための現金が不足する可能性があります。相続が発生した際に納税資金不足とならないように現金やすぐに換金できる財産を残しておくことが重要です。

対策としては生前贈与を活用して、現金を相続人に先に渡しておくことや生命保険を活用して、相続発生時に相続人が現金を受け取れるようにしておくことも有効です。

 

不動産は効果も大きいがリスクも大きい相続税対策

不動産は相続税対策として非常に効果が大きい方法です。財産が多く、相続税対策が必要な方は不動産による相続税対策を検討した方が良いでしょう。

しかし、不動産を購入することにより、相続がうまくいかないケースも多々あります。不動産投資はリスクも大きい手法ですので、慎重に計画を立てて行うようにしましょう。

 

 

相続対策の王道!不動産を活用した相続税対策の方法を解説

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相続頑張るFPです。

今回は相続対策の王道と言われている不動産を活用した相続対策について解説したいと思います。

不動産はなぜ相続税対策になる?

まずは、不動産を購入するとなぜ相続税対策になるのか。その仕組みを解説します。

不動産が相続対策になる理由は不動産の「時価」と「相続税評価」に差があるからです。土地と建物に分けてその仕組みをみて行きましょう。

土地は路線価で評価

土地の相続税評価は路線価で評価します。路線価は時価の8割程度と言われています。

路線価は国税庁のHPから調べることができます。

国税庁HP:https://www.rosenka.nta.go.jp/

建物は固定資産税評価額

建物は固定資産税評価額が相続税評価額となります。建物の固定資産税評価額は時価の5割~8割程度といわれています。

固定資産税評価額は建物の保有者に毎年届く納税通知書で確認することができます。

建物を人に貸すことで評価が下がる

不動産は時価と相続税評価の差があるため、購入するだけで相続税対策に繋がります。

更に、不動産を人に貸すことで更に評価を下げることができるのです。人に貸すことで土地の評価を下げることができる制度を「貸家建付地」と言います。

貸家建付地の計算式は以下の通りです。

【計算式】

自用地価格-自用地価格×借地権割合×借家権割合×賃貸割合

自用地価格とは自分で土地を使用した場合の価格。

借地権割合とは先ほどご紹介した路線価図にA~Gの記号で記されており、Aが90%、Gが30%です。借家権割合は一律30%です。賃貸割合はマンション等を賃貸している場合の入居状況です。

例えば、5室あるうちの4室が埋まっている場合の賃貸割合は80%となります。

次に、具体的にどのくらい相続評価額を圧縮できるか実際に計算してみましょう。

実際にいくら評価を圧縮できる?

次に実際にいくら相続税評価額を圧縮できるか計算をしてみましょう。

【事例】

土地の購入代金:1億円

土地の相続税評価:8,000万円

建物の購入代金:1億円

建物の相続税評価:7,000万円

借地権割合:70%

借家権割合:30%

賃貸割合:80%

 

上記のようなケースでは、総額2億円の土地・建物を購入して、土地と建物の相続税評価の合計が1億5,000万円となっています。

更に貸家建付地として評価額を圧縮することが可能です。先ほどご紹介した計算式にあてはめると、貸家建付地の評価額は以下の通りです。

8,000万円-8,000万円×70%×30%×80%=6,656万円(自用地評価額との差額は1,344万円)

つまり、総額2億円の不動産を購入することで

土地の相続税評価(貸家建付地評価後):6,656万円

建物の相続税評価:7,000万円

土地建物の評価額合計:13,656万円

となりますので、6,344万円の相続税財産圧縮に繋がるということです。

不動産による相続税対策の効果の大きさを実感いただけたのではないでしょうか。

 

不動産を活用した相続対策はメリットが大きい

ここまでご説明してきた通り、不動産を活用した相続税対策はメリットが大きいと言えるでしょう。理由の一つ目は効果が大きいと言うことです。大規模な不動産を購入することで、大幅に相続財産の評価を減らすことができます

先ほどの計算例では2億円の現金を不動産に換えることで、6,344万円の評価減となりました。その効果は非常に大きいと言えるでしょう。

もう一つの理由が即効性があるということです。現金を不動産に換えることですぐに相続税の評価減が期待できます。そのため、不動産による相続税対策は高齢になってからの対策としても非常に有効な方法です。

しかし、不動産による相続税対策にはデメリットもあります。不動産による相続税対策のデメリットは次の記事で解説します。

相続開始前3年以内の贈与は無効?生前贈与加算の概要と対策を解説!

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 相続頑張るFPです。

今回は贈与をする際の生前贈与加算について解説します。

生前贈与は相続税対策として有効な手段のひとつ

生前贈与は相続税対策として非常に有効です。その理由は確実に相続財産を減らすことができるということです。

生前贈与を行うことで、子どもや孫等に資産を移転することができます。そのため、相続税の課税対象となる財産を確実に減らすことが可能です。

多くの資産家が相続税対策を行うために生前贈与を活用しています。しかし、生前贈与は相続開始前3年以内の贈与は相続税の対象となる生前贈与加算という規定があります。生前贈与加算の概要と対策方法について確認していきましょう。

生前贈与加算とは

生前贈与は課税対象となる財産を減らすことができるため、相続税対策として非常に有効な方法です。

しかし、相続開始前3年以内に贈与をした場合「生前贈与加算」の対象となり、相続税の対象となります。

生前贈与加算は、相続発生に近いタイミングで贈与された資金は実質的に「贈与」ではなく、「相続」であるため、相続税の対象とする方が適切であると言う考えに基づいて贈与税ではなく、相続税の課税対象となる制度です。

生前贈与加算の制度があるため、病気等で死期が近いと思ってから贈与をしても生前贈与加算の対象となり、相続税の課税対象となるため、生前贈与の効果を得る事ができません

次に生前贈与加算とならないように相続税対策に有効な贈与方法について見て行きましょう。

生前贈与加算とならない贈与の方法

生前贈与加算の対象とならないように贈与を行うためにはどのように贈与を行えばよいのでしょうか。具体的に確認していきましょう。

若いうちから贈与をする

生前贈与加算とならないためには相続が発生する3年以上前に贈与をしておくことが重要です。暦年贈与の場合年間110万円まで贈与をできますが、多額の贈与を行うためには長い年月がかかります

高齢となってからの贈与は生前贈与加算の規定もあるため、贈与額はどうしても少なくなってしまいます。財産が多い方は若いうちから少しずつ贈与をしていくことが重要です。

法定相続人以外に贈与をする

生前贈与加算は相続税として加算する制度です。そのため、財産を相続しない人は相続開始前3年以内に贈与を受けていたとしても生前贈与加算の対象とはなりません

生前贈与は法定相続人以外にも贈与をすることが可能です。例えば、子どもの配偶者や孫は法定相続人ではありませんが、生前贈与を行うケースも多いでしょう。

相続発生時に財産を相続しない子どもの配偶者や孫であれば、相続開始前3年以内の贈与であっても生前贈与加算の対象とはならないため、亡くなる直前の贈与でも有効です。

住宅資金贈与の特例を活用する

住宅取得資金贈与の特例とは子どもや孫等に住宅を購入するための資金を非課税で贈与ができる制度です。

令和2年4月1日~令和3年3月31日までの贈与は1,000万円まで(省エネ等住宅の場合、1,500万円まで)、令和3年4月1日~令和3年12月31日までの贈与は700万円(省エネ等住宅の場合、1,200万円まで)まで一括で贈与する事が可能です。

住宅取得資金贈与の特例は贈与を行ってから相続が発生したとしても生前贈与加算の対象とはなりません。暦年贈与よりも多くの金額を贈与することができるため、子どもや孫が住宅の購入を検討している方は是非活用したい制度です。

 

贈与は計画的に行う事が重要

生前贈与は相続税対策として非常に有効です。しかし、時間がかかる方法でもあります。生前贈与加算の規定もあるため、慎重に検討する必要があります。

生前贈与を行う際はしっかりと計画を立てて早めから対策を打つことで重要です。

相続税対策に有効?暦年贈与制度について解説!

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 相続頑張るFPです。

今回は相続対策として有効な暦年贈与制度について解説したいと思います。

なぜ贈与が相続税対策になる?

暦年贈与制度について解説する前に、なぜ贈与が相続税対策になるのかということを解説します。贈与が相続税対策になる理由は、相続税の課税対象となる財産を減らすことができるからです。

相続税は被相続人(亡くなった人)の財産の額によって課される税金です。つまり、相続がが発生する前に財産を減らしておけば、相続税は少なくなるということになります。

では全ての財産を生前に贈与をするとどうなるかというと、相続税がかからない代わりに贈与税がかかります。相続税を逃れるために生前に多額の贈与を非課税でできるなってしまってはほとんどの人が相続税を払うことがなくなってしまうので、贈与税として課税する仕組みになっているのです。贈与税は相続税の補完的な役割ともいえるでしょう。

 

暦年贈与の仕組み

それではこの記事の本題である暦年贈与の仕組みについて見て行きましょう。

暦年贈与とはその年に贈与された贈与額に応じて贈与税を課税する仕組みです。暦年贈与は年間で贈与を受けた金額に応じて課税されます。贈与を受けた額が大きければ大きいほど、贈与税は高くなります。

暦年贈与は年間110万円までの贈与であれば非課税になるという点が重要です。毎年、110万円までの範囲で贈与をすることで少しずつ財産を減らすことができるのです。次に暦年贈与の仕組みを最大限活かす方法について解説します。

暦年贈与を効果的に行う方法

暦年贈与を効果的に行うにはどのように実施すればよいのでしょうか。効果的に行うためのポイントをご紹介します。

長期間かけて贈与を行う

暦年贈与を活用して非課税で多額の財産を移転するには長期間かけて贈与を行う必要があります。1年間に非課税で贈与をできる金額は110万円までですが、10年間行うことで、1,100万円の贈与を行う事が可能です。

多くの人に贈与を行う

暦年贈与は贈与を受ける人が受け取った金額によって課税されますので、贈与する側がいくら贈与したかは関係ありません。そのため、多くの人に贈与を行うことでより多くの金額を移転することができます

法定相続人以外にも贈与をすることも可能ですので、子どもの配偶者や孫にも贈与をすることを検討してみても良いでしょう。

例えば、子どもが2人、孫が4人いる場合で法定相続人である子ども2人に贈与する場合は年間に非課税で贈与できる金額は220万円となりますが、子どもとその配偶者、孫に贈与をすることで、年間880万円の贈与をすることが可能です。

暦年贈与を行う場合の注意点

暦年贈与を行う際の注意点について解説します。

贈与を受けた人が贈与を受けたお金を使える状態にしておく

贈与をする際に、子どもや孫の名義に財産を振り込むケースが多くなります。その際、振り込んだ通帳や印鑑を贈与者である親や祖父母が管理するケースがあります。

このようなケースでは「名義預金」として相続税の対象となってしまう場合があります。名義預金とは実質的に贈与をした人がお金を管理しており、贈与を受けた人がお金を使えない状態となっているため、贈与したことにならないという状態です。

名義預金とみなされてしまうと贈与をした意味が無くなってしまうので注意が必要です。

定期贈与とみなさらないように注意する

暦年贈与とは毎年110万円までの範囲で行う贈与に対する課税の方法です。しかし、1,000万円を10年間で毎年100万円ずつ贈与したいう契約になっていたとみなされた場合、1年間に100万円ずつ暦年贈与をしたわけではなく、1,000万円を10年間かけて贈与したとみなされる可能性があります。この場合、1,000万円を贈与したものとして贈与税が課されることになるため、注意が必要です。

定期贈与とみなされないようにするためには毎年贈与する金額を少し変えたり、贈与する時期をを変えたり、毎年贈与契約書を作成することが有効です。

相続開始前3年以内の贈与は無効!?

暦年贈与には相続開始前3年以内の贈与は相続税に加算する「生前贈与加算」という制度があります。生前贈与加算については非常に重要なので、次の記事で詳しく解説します。

 

 

相続税は自分で申告できる?申告の方法や流れを解説

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 相続頑張るFPです。

今回は相続税の申告方法や流れを解説したいと思います。

 

相続税申告の難易度は保有する財産次第

相続税の申告は税理士等の専門家でなくてもできるものなのでしょうか?

相続税の申告は決して簡単なものではありません。書類を集めたり、申告書を記載することは慣れない方には難しいと言えるでしょう。

また、保有する財産の種類によって申告の難易度が大きく異なります。実は財産が多くても保有している財産が預貯金だけであれば、相続税の申告は難しいものではありません。

しかし、保有しているのが不動産等、評価が難しい財産を多く保有している場合は、相続税の申告書類が複雑になってしまいますので、難易度が高くなってしまいます。

相続税の申告を自分で行おうとする場合は、まずは被相続人の財産を調べて自分で申告ができそうかどうかを見極める必要があります。

 

相続税申告の流れ

相続税を申告するまでの流れをご紹介します。

①法定相続人を確定するための書類を集める

相続税を申告するためには、まず法定相続人が誰なのかを確定する必要があります。法定相続人を確定するためには被相続人が生まれてから亡くなるまでの戸籍を全て集める必要があります。

また、相続人全員の戸籍謄本や戸籍の附票も必要です。これらの書類は収集することが難しい場合は弁護士や司法書士等の専門家に依頼すれば代理で収集することが可能です。自分で集めるのが難しい場合は専門家に依頼するようにしましょう。

②財産に関する書類を集める

相続人を確定することができたら、次は財産を確定するための書類を収集します。被相続人が保有していたほぼすべての財産が相続税の対象となりますので、あらゆる財産をリストアップしてそれぞれの相続税評価を計算するための書類を集める必要があります。

例えば、銀行の定期預金であれば、現在の残高と預入期間中に得られた経過利子が相続税の課税対象財産になりますので、金融機関ごとに残高証明書と経過利息計算書を用意する必要があります。これらの書類は被相続人が利用してた金融機関に依頼すると発行してくれます。

また、不動産を保有している場合は、固定資産税課税明細書や登記簿謄本、地積測量図等を収集する必要があります。

自動車やゴルフ会員券、貴金属なども相続税の課税対象となりますので、それぞれの評価を証明する書類も必要です。

財産の額ではなく、種類が多ければ多いほど書類を集めることが大変になります。

 

③相続税の申告書類を作成する

書類を収集することができれば、いよいよ相続税の申告書類を記入します。

相続税の申告書類は第1表から第15表までに分かれており、保有している財産などによって必要箇所に記載して提出します。

申告書には誰が何を相続するかをそれぞれ記載していくことになりますので、書類がしっかりと収集できていればそこまで難しいものではありません。相続税の申告はしっかりと漏れが無いように書類を集めることが重要です。

自分で申告を行う際の注意点

自分で相続税を申告する際はどのような点に気を付ければ良いのでしょうか。注意点を確認しておきましょう。

期限を守る

相続税の申告は相続が発生したことを知った日から10ヶ月以内という短い期間に行う必要があります。

もし期限を過ぎてしまうと使えなくなる特例があったり、延滞税がかされたりするなどデメリットが多くあります。

自分で行う場合は必ず期限を守るように気を付けましょう。

特例の適用漏れがないようにする

 相続税には様々な特例があります。特例を適用することで、相続税の節税につながりますので、適用できるものは漏れないようにすることが重要です。

難しい場合は専門家に依頼を

相続税の申告は簡単なものではありません。まずは自分で相続税を申告できるかどうかを見極めることが重要です。

自分でできると判断した場合は速やかに手続きを行う必要があります。もし期限に遅れそうな場合は無理をせずに専門家に早めに相談する。

パターン別!基礎控除の計算方法を解説徹底解説

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 相続頑張るFPです。

今回は相続税の対策を検討するうえで欠かせない知識「基礎控除」について解説したいと思います。

基礎控除とは?

基礎控除とは全ての相続に対して相続財産から差し引くことができる制度です。基礎控除の計算方法は3,000万円+法定相続人×600万円で計算します。

例えば、法定相続人が3人の場合は4,800万円(3,000万円+3人×600万円)となります。

被相続人の財産が基礎控除の範囲内であれば、相続税を支払う必要がありません。そのため、相続税対策を検討する場合は財産が基礎控除を超えているかどうかを計算する必要があります。

保有している財産が基礎控除範囲内であれば、相続税がかかることはありませんので、相続税対策を行う必要はありません。

平成27年に基礎控除が減額となった

実は平成27年の相続税改正で基礎控除は大幅に減額になっています。

改正前の基礎控除は5,000万円+法定相続人×1,000万円でした。そのため、法定相続人が3人の場合の基礎控除額は8,000万円となります。基礎控除額の減額で相続人が3人の場合は基礎控除額が3,200万円も減ったことになります。

この改正により相続税の基礎控除を超える方は大幅に増えました。今までであれば、相続税対策を行う必要が無かった人も相続税対策を行う必要が出てきているのです。

基礎控除の計算で間違えやすいケース

基礎控除の計算はそう難しいものではありません。しかし、相続税の基礎控除の対象となる法定相続人の数を間違いやすいケースがあります。

パターン別に間違いやすいケースをみて行きましょう。

養子がいる

養子も実施と同じように法定相続人となりますので、基礎控除を算出する際の法定相続人に加算することができます。

ただし、被相続人に実施がいる場合は一人まで、実施がいない場合は二人までと定められています。

養子を迎えることは意識的に基礎控除を増やす唯一の方法です。しかし、養子を増やせば増やすほど基礎控除が増えると言う訳ではありませんので注意しましょう。

代襲相続が発生

代襲相続が発生しているケースも基礎控除の計算を間違えやすいケースです。

代襲相続とは法定相続人が被相続人よりも先に亡くなっていて子供が代わりに法定相続人となるようなケースです。

代襲相続が発生するパターンとしては、法定相続人である子供が既に亡くなっていて、孫が代襲で法定相続人となるケースや被相続人に子供がおらず、兄弟姉妹が法定相続人となる場合に兄弟姉妹が被相続人よりも先に亡くなっていて甥・姪が代襲で法定相続人となるケースがあります。

このようなケースで代襲相続人が複数いる場合もあるでしょう。例えば、息子に子供(被相続人から見ると孫)が2人いる場合には2人とも法定相続人となりますので、基礎控除の算出に加算されることになります。

相続放棄した法定相続人がいる

法定相続人が相続放棄をした場合、民法では元から法定相続人ではなかったことになるという規定がありますそのため、相続放棄をした法定相続人は一切の相続権を失います。

この規定を見ると相続放棄をした人がいると法定相続人として基礎控除の算出には加算できないと思われる方も多いと思います。

しかし、実際には相続放棄をした人がいたとしても相続税の基礎控除を算出する際の法定相続人として加算されます。

民法と相続税法は考え方が異なるため、相続放棄をした人でも基礎控除の算出には加算するということは覚えておきましょう。

基礎控除は相続を考えるうえで必須の知識

相続税の基礎控除は相続を考えるうえでは必須の知識です。

特に相続税対策をするうえでは相続税がかかるか、かからないか、かかるとしたらいくらかかるのかを検討して対策を行う必要があります。

基礎控除の計算方法がわからなければ、相続税を計算することができませんので、基礎控除は必ず身に付けておきたい知識

 

限定承認とはどんな制度?制度の概要や注意点を解説します。

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相続がんばるFPです。

 

前回は「相続放棄」について解説しましたので、今回は「限定承認」について概要や注意点、相続放棄との違いをわかりやすく解説したいと思います。

限定承認って何?

まずは限定承認の制度の概要について解説します。

限定承認とはプラスの財産がマイナスの財産を上回った場合のみ、財産を相続することをあらかじめ宣言しておく制度です。

そのため、限定承認は被相続人の財産の全容が把握できない際に有効な制度です。借金があることはわかっているけれども、借金の額やプラスの財産の額がわからない場合、限定承認をしておくことで万が一借金の額が多かった場合に借金を返済する必要が無くなります。

もう一つ限定承認がよく利用されるのは、借金が多くてもある特定の財産を相続したいケースです。例えば、借金が明らかに多い場合でもどうしても自宅不動産を相続したい場合は限定承認し、自宅不動産の対価のみ元々相続人が保有していた財産で支払うことで相続することが可能です。

相続放棄は初めから相続人では無かったことになりますので財産を一切相続することができませんが、限定承認であれば相続財産を一部相続することができるのです。

限定承認の手続方法

限定承認は相続人全員で合意をして行う必要があります。相続放棄は相続人が単独で行うことができますが、相続人全員が合意しなければ行うことができないと言う点は大きな相違点となります。

また、相続人のうち一人でも反対をすれば限定承認を行うことはできません。まずは相続人全員の合意をとりつけることが必要です。

相続人の合意がとれれば、家庭裁判所に以下の書類を提出します。

①限定承認の申述書

②被相続人の戸籍

③被相続人の戸籍の附票または住民票除票

④相続人全員の戸籍謄本

⑤収入印紙

 

上記書類を家庭裁判所に提出し、限定承認が受理されると「相続財産管理人」を選任し「官報公告」を2ヶ月以上行う必要があります。

官報公告とは限定承認を行ったことを公に知らせることで、被相続人に対して債権がある場合は名乗り出る旨を知らせる目的で行います。

また、相続人が被相続人に債務があることが分かっている債権者いる場合は官報公告だけでなく、直接債権者に連絡を行う必要がありますので注意しましょう。

官報公告が終了すると名乗り出た債権者に対し、相続財産から可能な限り支払います。プラスの財産が残った場合は法定相続人が相続することが可能です。

 

限定承認の注意点

限定承認にはどのような注意点があるのでしょうか。確認してみましょう。

限定承認の期限は相続が発生したことを知った日から3ヶ月以内

限定承認の期限は相続放棄と同じく相続が発生したことを知った日から3ヶ月以内です。しかし、相続放棄と大きく異なる点は相続人全員で合意して行う必要があると言う点です。

相続人の一人でも反対した場合、限定承認を行うことができませんので、合意を形成するのに時間がかかる場合もあります。

そのため、限定承認は相続放棄よりも期限としては厳しいと言えるでしょう。限定承認を検討する際は他の相続人と早めから話し合いを始め限定承認の準備をする必要があります。

相続放棄よりも手続が複雑

限定承認は債権者に知らせるために官報公告を行うなど、相続放棄よりもかなり手続きが複雑です。自分で手続きをすることが難しい場合は弁護士等の専門家に依頼することも検討してみるとよいでしょう。

また、被相続人の財産が明らかにマイナスの場合には限定承認よりも相続放棄を行うことをオススメします。

限定承認は相続放棄よりも利用することが難しい制度

限定承認はここまでご説明した通り相続放棄よりも利用することが難しい制度です。相続人全員の合意を形成する必要があり、手続きも複雑です。

相続財産の全容が掴めない場合や特定の財産を引き継ぎたい場合には早めに準備を始める必要があるでしょう。