限定承認とはどんな制度?制度の概要や注意点を解説します。

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相続がんばるFPです。

 

前回は「相続放棄」について解説しましたので、今回は「限定承認」について概要や注意点、相続放棄との違いをわかりやすく解説したいと思います。

限定承認って何?

まずは限定承認の制度の概要について解説します。

限定承認とはプラスの財産がマイナスの財産を上回った場合のみ、財産を相続することをあらかじめ宣言しておく制度です。

そのため、限定承認は被相続人の財産の全容が把握できない際に有効な制度です。借金があることはわかっているけれども、借金の額やプラスの財産の額がわからない場合、限定承認をしておくことで万が一借金の額が多かった場合に借金を返済する必要が無くなります。

もう一つ限定承認がよく利用されるのは、借金が多くてもある特定の財産を相続したいケースです。例えば、借金が明らかに多い場合でもどうしても自宅不動産を相続したい場合は限定承認し、自宅不動産の対価のみ元々相続人が保有していた財産で支払うことで相続することが可能です。

相続放棄は初めから相続人では無かったことになりますので財産を一切相続することができませんが、限定承認であれば相続財産を一部相続することができるのです。

限定承認の手続方法

限定承認は相続人全員で合意をして行う必要があります。相続放棄は相続人が単独で行うことができますが、相続人全員が合意しなければ行うことができないと言う点は大きな相違点となります。

また、相続人のうち一人でも反対をすれば限定承認を行うことはできません。まずは相続人全員の合意をとりつけることが必要です。

相続人の合意がとれれば、家庭裁判所に以下の書類を提出します。

①限定承認の申述書

②被相続人の戸籍

③被相続人の戸籍の附票または住民票除票

④相続人全員の戸籍謄本

⑤収入印紙

 

上記書類を家庭裁判所に提出し、限定承認が受理されると「相続財産管理人」を選任し「官報公告」を2ヶ月以上行う必要があります。

官報公告とは限定承認を行ったことを公に知らせることで、被相続人に対して債権がある場合は名乗り出る旨を知らせる目的で行います。

また、相続人が被相続人に債務があることが分かっている債権者いる場合は官報公告だけでなく、直接債権者に連絡を行う必要がありますので注意しましょう。

官報公告が終了すると名乗り出た債権者に対し、相続財産から可能な限り支払います。プラスの財産が残った場合は法定相続人が相続することが可能です。

 

限定承認の注意点

限定承認にはどのような注意点があるのでしょうか。確認してみましょう。

限定承認の期限は相続が発生したことを知った日から3ヶ月以内

限定承認の期限は相続放棄と同じく相続が発生したことを知った日から3ヶ月以内です。しかし、相続放棄と大きく異なる点は相続人全員で合意して行う必要があると言う点です。

相続人の一人でも反対した場合、限定承認を行うことができませんので、合意を形成するのに時間がかかる場合もあります。

そのため、限定承認は相続放棄よりも期限としては厳しいと言えるでしょう。限定承認を検討する際は他の相続人と早めから話し合いを始め限定承認の準備をする必要があります。

相続放棄よりも手続が複雑

限定承認は債権者に知らせるために官報公告を行うなど、相続放棄よりもかなり手続きが複雑です。自分で手続きをすることが難しい場合は弁護士等の専門家に依頼することも検討してみるとよいでしょう。

また、被相続人の財産が明らかにマイナスの場合には限定承認よりも相続放棄を行うことをオススメします。

限定承認は相続放棄よりも利用することが難しい制度

限定承認はここまでご説明した通り相続放棄よりも利用することが難しい制度です。相続人全員の合意を形成する必要があり、手続きも複雑です。

相続財産の全容が掴めない場合や特定の財産を引き継ぎたい場合には早めに準備を始める必要があるでしょう。