資産管理会社を活用した相続対策とは②

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相続頑張るFPです。

今回は前回に引き続き資産管理会社を活用した相続対策について解説します。

資産管理会社を活用することで相続税の節税や手続きの負担を減らすことが可能です。

しかし、資産管理会社を設立することでデメリットもあります。

今回は相続対策で資産管理会社を設立することの注意点を解説します。

 

維持に費用がかかる

資産管理会社を設立すると設立時だけでなく維持に費用がかかります。

個人で資産を保有していても維持にコストは多くかかりません。しかし、会社として運営することで個人で管理している時にはかからない費用がかかります。

具体的には社会保険の加入や保険料の支払い、役員報酬を支払う際の源泉徴収や年末調整等です。

 

また、法人化することで、収支の管理や記帳を厳密に行う必要があります。これらの作業にも費用がかかります。

法人化することで節税につながる部分もありますが、費用もかかるため節税効果と必要経費がどちらが大きいかを比較して検討する必要があります。

 

専門家の助けが必要

法人の設立には税理士等の専門家の知識が必要です。法人の設立は不動産オーナーの相続税対策としては有効な手段ですが、設立の事例が多いわけではありません。資格を持っていてもノウハウを持っていない税理士も数多くいます。

高度なノウハウを持つ税理士に依頼する際は相応の報酬も必要となります。法人化は簡単なことではありませんので、専門家に費用を支払う必要があると言うことは覚えておきましょう。

 

法人設立時に税金がかかる場合がある

法人を設立する際には不動産等の財産を法人に移転する必要があります。

法人に財産を移転する際は個人から設立した法人に不動産を売却する方法があります。

不動産を法人に売却した場合は譲渡所得税がかかります。法人は自分で管理しているため、他人に売却するという意識は低いかもしれません。しかし、法人と個人は別人格となるため、他人に売却した際の税金と考え方は同じです。

 

時価で売却した際に購入価格よりかなり高い場合や購入価格がわからない場合は特に注意が必要です。

購入価格が分からない場合は売却価格の5%を購入価格とみなすため、不動産を法人に売却したことで大きな利益を得たことになってしまいます。

 

不動産の所得は5年超の長期保有の場合所得税と住民税であわせて20%の税金がかかります。譲渡所得税は譲渡をした時にかかる税金ですので、個人として保有し続けた場合はかかることは無い税金です。

資産管理会社を設立することで、不動産の譲渡所得税を支払う必要があるため、相続税の節税効とどちらが得になるかよく検討する必要があるでしょう。

税理士等の専門家に細かく資産してもらうことが重要です。

 

 

資産管理会社を活用した相続対策とは①

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相続頑張るFPです。

資産管理会社を作ることで相続税対策になるということを聞いたことがある方は多いのではないでしょうか。資産管理会社を作るとなぜ相続対策になるのでしょうか。

今回は資産管理会社を活用した相続税対策についてご紹介したいと思います。

 

資産管理会社の仕組み

まず、資産管理会社の仕組みについて解説します。

資産管理会社とは不動産等の資産を管理するための会社です。資産管理会社は不動産を所有し、不動産から得た資金を社員に給与として支払います。社員には妻や子ども、孫など家族がなることが多いです。

法人を設立する場合は売買または現物出資という方法で財産を移転します。

現物出資とは法人の株式を取得して財産を法人名義にする方法です。

一方の売買とは時価で法人に譲渡をする方法です。法人に譲渡をする場合は譲渡した時点での時価で譲渡所得税が課されますので注意が必要です。

つまり、資産管理会社は不動産オーナー等が所有する不動産を法人名義に財産を移転して、そこから得た収益を社員である家族等に給与として支払う仕組みです。

 

資産管理会社を活用した相続税対策

資産管理会社を活用すると相続税対策になります。

何故資産管理会社を活用すると相続税対策につながるのでしょうか。その仕組みをみていきましょう。

資産管理会社を活用して相続税対策となる理由は財産を移転できると言う点にあります。通常不動産オーナーは不動産から得られる収益は自分の個人財産となります。

一方、給与として不動産から得られた収益を家族に配分しておくことで、相続が発生した時に相続税の課税対象となる財産を減らすことができます。

資産管理会社を活用して相続税対策を行う場合は社員を子どもや子どもの妻、孫などにしておくと次の世代に財産を移転することができるため効果的です。

また、法人化すると、株価を下げることで資産価値が下がります。そのため、株価を下げることで相続税評価を下げることができるのです。株式は配当や純資産などさまざまな方法で株価が決まります。株価を引き下げることで相続税対策になります。

 

簡単に配分できる

資産管理会社を設立することで財産の配分も容易に行うことができます。不動産を相続する場合、不動産の登記など、様々な手続きを行う必要があります。

資産管理会社を設立する際は手間がかかりますが、相続が発生した際には不動産を個人として所有しているよりも資産管理会社を設立していた方が手続きが簡単です。

配分についても資産管理会社の株式を配分することで容易に手続きをすることが可能となります。

資産管理会社は財産を移転することによって節税につながるだけでなく、資産配分を容易にすることができるのです。

農地を相続する際の注意点

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相続頑張るFPです。

遺言を作成するなど相続対策をする人が増えています。遺言を作成する際は金融資産や不動産などあらゆる財産を誰に遺すか指定します。

財産を遺す際に農地がある場合はどのようなことに気をつければ良いのでしょうか。農地を相続する際の注意点について解説します。

農地とは


農地法で定められていて「耕作のために供される土地」と定義されています。農地法上の農地は登記上で判断するのではなく、実際に管理を行なって栽培を行なっているか否かが重要となります。
また、家庭菜園など庭で野菜を作っている場合は通常農地とはなりません。家庭菜園はあくまで自宅の一部で行なっているに過ぎず、一時的なものであるケースが多いからです。

農地を相続する方法


農地を相続する際の手続きについて解説します。

農地を相続する際には農地を相続登記する必要があります。相続登記は農地だけでなく不動産を相続する際は必ず行う必要があります。
登記は土地を保有していることを対外的に公示する役割があります。土地を登記することでその人が土地の保有者であることを示すことができるのです。

農地を相続する際は登記の他に農業委員会に届け出る必要があります。
農業委員会への届出は被相続人が亡くなった時から10ヶ月以内に行う必要があります。農業委員会への届出義務は農地法3条によって定められています。

農業委員会には相続する人の氏名や住所、土地の所在や面積などを届け出る必要があります。
相続人が農業を続けるとことが難しい場合は農業委員会に農地を借りて広く耕作したい人の斡旋を依頼することも可能です。

 

農地を相続する場合の注意点

農地を相続する際にどのようなことに気をつければよいのでしょうか。

相続人以外の人に遺贈する場合

相続人以外の人に遺贈する場合は農業委員会への届出だけでなく、許可が必要です。
農業を行なっていない第三者への遺贈は許可がおりない可能性があります。
ただし、全ての財産を特定の人に遺贈する「包括遺贈」の形式をとった場合、農業委員会の許可は必要ありません。

包括遺贈について詳しくはこちらをご確認ください。

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相続放棄をする場合


農地を相続人が継続して農業を続けることが難しい場合は相続放棄をすることもできます。
相続放棄は被相続人の死亡から3ヶ月以内に家庭裁判所に申し立てを行うことで、遺産相続を放棄することが可能です。
ただし、農地を相続放棄する場合、他の財産も放棄することになり、金融資産や自宅不動産も相続することはできません。相続放棄をする場合は全ての財産を放棄することを理解して行う必要があります。

相続対策に使える医療保険のプレゼント

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相続頑張るFPです。
今回は相続対策に使える医療保険の「プレゼント」について解説したいと思います。

 

医療保険のプレゼントとは

医療保険をプレゼントすると言ってもなかなかピンと来ない方もいるかもしれません。

医療保険をプレゼントするとは子や孫を被保険者とする民間の医療保険を親や祖父母が契約し、保険料を全額前払いするということです。

契約者は親や祖父母がなり、被保険者を子や孫にし、契約者を後ほど変更することで子や孫が病気や怪我をした時に保険金を自分で受け取ることができます。

 

医療保険のプレゼントのメリット

医療保険をプレゼントするとどのようなメリットがあるのでしょうか。


相続税対策になる

医療保険をプレゼントする最大の理由は相続税対策になると言う点です。
医療保険をプレゼントする場合、親や祖父母が保険料を前払いすることになります。保険料を前払いすることで相続税の課税対象となる財産が減るため相続税対策につながるのです。

一生涯の支えになる

医療保険は一生涯、子や孫を支えることができると言う点もメリットの一つです。生前贈与は同じように財産を減らすことで相続税対策になりますが、贈与された資金はすぐに使ってしまう可能性があります。医療保険は一生涯続くため、子や孫を長期間支えることができます。

 

医療保険のプレゼントのデメリット

医療保険をプレゼントするデメリットはどのようなことが考えられるのでしょうか。具体的に見ていきましょう。

 

公的保険が充実する可能性がある

日本の保険は公的保険と民間の保険に分かれています。公的保険は全ての国民が加入し、医療費の負担を減らす制度です。

一方、民間の医療保険は自分で保障を充実させたい部分を任意で契約するものです。
民間の医療保険は公的保険の補完的役割ですが、公的保険の内容が変更される可能性もあります。
このような場合、一生涯の保障をつけた医療保険がそこまで必要でなくなるケースもあります。

インフレに弱い

医療保険は入院や通院での支給額がきまっています。金額が固定されていますが、インフレとなり、物の価値が上昇しお金の価値が下落した場合、保障が十分で無くなる可能性があります。

医療技術が発達する可能性がある

医療保険は長期間にわたる契約となるため、医療技術の発達により保障がそこまで必要なくなるケースがあります。
例えばガンによる入院に手厚い保険があるとします。入院1日につき1万円の保険金がおりるとしても、医療技術の発達により、通院で治療できる範囲が広がる可能性もあるでしょう。このような場合、高額のお金を払いつけた手厚い保障があまり必要ないということも考えられます。

遺言を書く方必見!補充遺言について解説

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相続頑張るFPです。

今回は遺言を書く方は必ず覚えておきたい「補充遺言」について解説します。

 

補充遺言とは

補充遺言とはその名の通り、遺言の内容を「補充」するものです。

補充遺言で補充する主な内容は、財産を相続させようとした相続人が先に亡くなっていた場合です。

遺言の効力発生時期は遺言者が亡くなったタイミングです。遺言を作成してから亡くなるまでにタイムラグがあるため、さまざま変化があります。

中でも大きな変化となるのが、財産を遺そうとしていた相続人が先に亡くなっている場合です。相続人が先に亡くなっていた場合、遺そうとしていた財産を誰が相続を誰が相続するか、遺産分割協議を行う必要があります。

補充遺言で、遺そうとしていた相続人が先に亡くなった場合、誰にその財産を相続させるかを決めておくことで、相続人が先に亡くなっていた場合でも遺言で財産の配分を指定することが可能です。

補充遺言が必要なケース

補充遺言が必要なケースとはどのようなケースなのでしょうか。具体的に確認していきましょう。

配偶者に財産を遺すケース

配偶者に財産を遺すケースでは補充遺言を作成しておいた方がよいでしょう。

配偶者は比較的年齢が近く、先に亡くなっている可能性もあります。配偶者が亡くなっていた場合は誰に財産を遺すのか明確にしておいたほうがよいでしょう。

兄弟・姉妹に財産を遺すケース

兄弟・姉妹に財産を遺すケースも補充遺言を作成しておいた方がよいでしょう。兄弟・姉妹は年齢が近いということもありますが、配偶者に財産を遺すケースよりも相続人が迷うケースが多くなります。

例えば、兄に1/2、妹に1/2の割合で財産を遺すという遺言を作成し、兄が先に亡くなった場合、兄の子ども(甥・姪)が兄が相続するはずであった財産を相続するか、妹が財産を相続するかは判断が分かれる所です。

もちろん正解はありませんが、補充遺言を作成しておくことで相続人が判断に迷うことがなくなりますので、補充遺言を作成しておくことをおすすめします。

友人・知人に財産を遺すケース

友人・知人に財産を遺すケースも補充遺言を作成しておく必要があります。

友人・知人に財産を遺すケースはその人と特別な関係にあって財産を遺そうと考える方がほとんどです。

友人・知人が遺言者よりも先に亡くなっていた場合には誰にその財産を相続してもらうか、他の相続人も迷ってしまうケースがほとんどです。

他の相続人が困らないためにも補充遺言を作成しておいた方がよいでしょう。

遺言を書く時に要注意!特定遺贈と包括遺贈の違いとは?

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相続頑張るFPです。

今回は遺言を書くときに必ずおさえておきたい用語である「特定遺贈」と「包括遺贈」について解説します。

 遺贈とは

遺贈とは亡くなった際に財産を譲渡する行為です。遺贈をする相手は法定相続人だけでなく、知人や法人とすることも可能です。財産の遺贈を受ける人を「受遺者」といいます。

遺贈の効力が発生するのは遺贈する人が亡くなった時。遺贈する人が存命の間は遺贈の効力は発生していませんので、遺贈を受ける人が財産を自由に処分することはできません。

特定遺贈とは

次に特定遺贈について解説します。

特定遺贈とは財産を特定して遺贈することです。つまり、不動産はAに、現金はAとBに2分の1ずつ遺贈するという場合や株式をCに遺贈すると言うように遺贈する財産を特定するのが特定遺贈です。

 

特定遺贈の特徴は、亡くなった人の財産を全て相続するわけでは無く、特定の財産のみを遺贈するということです。ただし、遺言によって指定された相続人は必ずその財産を相続しなければならないかというとそうではありません。

特定遺贈で指定された相続人等の受遺者は特定遺贈を放棄することが可能です。放棄をする場合も一部の財産について放棄し、一部の財産を受け取ることも可能です。

特定遺贈を放棄する場合は他の相続人や遺言執行者に対し、遺贈を放棄する旨を伝えることで放棄をすることができます。

口頭でも放棄をすることは可能ですが、文書に残していた方が無難でしょう。

特定遺贈を放棄した際は放棄された財産のみ、他の相続人で遺産分割協議を行って財産を配分することになります。

包括遺贈とは

包括遺贈について解説します。

包括遺贈とは特定遺贈のように財産を指定するのではなく、財産の全部または一定の割合を相続させる遺贈方法です。

例えば、相続人Aに包括遺贈をすると言う場合はすべての財産をAが相続することになります。財産をAとBに1/2ずつ包括遺贈をすると記した場合は、AとBで全ての財産を1/2ずつ相続することになります。

包括遺贈を受ける場合の注意点は被相続人の財産がプラスの財産だけとは限らないということです。

時価5,000万円の不動産と1億円の借金があった場合、包括遺贈を受けた受遺者は時価5,000万円の不動産とともに1億円の借金を抱えることになります。

このようなケースもありうるため、受遺者は包括遺贈の放棄をすることも可能です。

受遺者が放棄をする場合は相続の開始を知った時から3ヶ月以内に家庭裁判所に包括遺贈を放棄する旨を申述する必要があります。特定遺贈とは異なり、家庭裁判所に申述する手続きが必要である点は注意しましょう。

 

 

遺言書がある場合とない場合の相続の進め方

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相続頑張るFPです。

前回は遺留分や遺留分が認められる相続人について紹介しました。

今回は、遺言書がある場合とない場合それぞれの相続の進め方を紹介したいと思います。

 

 

遺言書がある場合の相続の進め方

ここまでは、遺留分について説明してきました。
では、相続手続きを進めるうえで遺留分はどのように扱われるのでしょうか。

 

遺留分は遺族が相続できると保証されているわけですが、当然ながら自動的に相続手続きがなされるわけではありません。
定められた手続きを経てはじめて、遺留分もしくは相続分を受け取ることができます。

 

ではどのように手続きを進めていく必要があるのか、遺言書がある場合とない場合に分けて説明していきます。

 

自筆証書遺言証書の場合は家庭裁判所での検認手続きが必要

遺言書がある場合、開封する前にまず行うべきなのは遺言書の種類を確認することです。
自筆証書遺言、もしくは秘密証書遺言の場合は、開封前に家庭裁判所で検認を行わなければいけません。

 

検認とは、相続人の立会いの下で遺言書を開封し、偽造や変造がなされていないかを確認する手続きのことです。
遺言の改ざんを防ぐために自筆証書遺言を勝手に開封することは法律で禁じられており、うっかりこれを破ると5万円以下の罰金が科せられる可能性があります。

 

また、勝手に遺言書を開封すると、当然ながら他の相続人からも遺言書の内容が正確なのか、改ざん・捏造されていないのか、と疑いをもたれることにもなりかねません。

 

遺言書が自分に不利な内容であって、故意に遺言書を隠匿、破棄、改ざん、偽造などした場合は、相続人としての権利を失います。
自筆証書遺言、秘密証書遺言の場合は必ず裁判所で検認してから開封するようにしましょう。

 

なお、公正証書遺言の場合はこの検認の手続きは不要です。

 

遺言内容が遺留分を侵害していた場合は遺産分割協議を行う

遺言書があった場合は、原則として遺言書の内容通りに相続手続きを進めていくことになります。
下記のような流れになります。

 

遺言執行者の専任
・財産、相続人を再確認し必要書類を準備
・名義変更など実際の相続手続きを進める

 

遺言書の中で遺言執行者が専任されている場合もあります。
もし専任されていなければ、相続人の代表者が手続きを進めるか、もしくは弁護士などに依頼して相続を進めていくことになります。

 

では、遺言書の内容が遺留分を侵害しているなど、一部の相続人が遺言内容に納得できない場合はどうすれば良いのでしょうか。

 

この場合は遺言書通りに相続を執行するのではなく、相続人全員の話し合いで遺産分割を行うことができます。
ただしこの遺産分割協議は相続人全員の同意が必要であり、話し合いで決めた遺産分割協議書には全員の実印を押さなければいけません。

 

このように相続人全員の同意が得られるのであれば、遺言書とは違う内容で遺産分割することができるのです。

 

遺言書によって遺留分が侵害されているのに遺産分割協議に応じてもらえない場合は、遺留分侵害請求権を行使することができます。

 

このようにして、侵害された遺留分を遺贈や贈与を受けた相手に請求することになります。請求を受けた相手はこれを拒むことはできません。

 

 

遺言書なしの場合の相続の進め方

では遺言書がない場合はどうでしょうか。

この場合は、そもそも遺留分という考え方は当てはまりません。遺産分割協議と言って相続人の話し合いで遺産の分割を決めていくことになります。
もしくは法定相続分に従って相続手続きを進めます。

 

具体的にどのように進めていけば良いのでしょうか。

 

以下でその流れを説明しますが、相続手続きを進める前に、まずは遺言書が本当にないか、念のためもう一度確認しておきましょう。

 

相続手続きをある程度進めてから、もしくは手続き全部終わってから遺言書が思わぬところから見つかった、というケースも実際にあるのです。

 

自筆証書遺言であれば、故人の机や知り合いの弁護士、信託銀行に預けていないか確認しましょう。

公正証書遺言であれば、公証役場で遺言書検索システムを使って探してもらうことができます。

 

遺言書がないことをよく確認したうえで、実際に手続きを進めるようにしましょう。

 

相続人の調査と確定

まず行うべきは、相続人の調査です。

家族なのでそんなことは十分わかっていると思っても、実際に被相続人の生まれたときから亡くなるまでの戸籍を準備しなければいけません。あとの相続手続きの際に必要になるからです。

 

また、この段階で前妻との間に子供がいたとか音信不通の親や兄弟がいることがわかるケースもあります。実際に戸籍を揃えて法定相続人を確定しましょう。

法定相続人の範囲と順位については後で解説します。

 

相続財産の調査

次に、被相続人の財産を調査していきます。
預貯金や不動産などプラスの財産だけではなく、ローンなどマイナスの財産も調査し確認していかなければいけません。

 

具体的には、被相続人が利用していた金融機関に残高証明書を請求したり、所有していた不動産の固定資産課税台帳を市役所で交付してもらいます。

 

また株式についても、証券会社などに問い合わせて取引残高報告書を取り寄せます。

被相続人の遺品整理の際に、財産に関する資料や手がかりを集めておくと良いでしょう。

 

遺産分割協議

相続人と相続財産が確定すると、次に相続人全員で話し合って遺産分割協議を行います。
遺産分割協議では、だれがどの財産を相続するのかを話し合い、決定した内容を遺産分割協議書に記します。

 

話し合いによって遺産の分割方法を決めていくので、相続人全員の同意が得られるのであれば、誰か一人に全財産を相続させる、ということもできます。

 

もちろん、一人の相続人が提案した遺産分割方法に他の相続人が同意することでも協議成立となります。
いずれにしても相続人全員の参加、同意が条件となります。
法定相続人が一人の場合はこの遺産分割協議は必要ありません。

 

では、もし相続人同士の話し合いがまとまらなければどうすれば良いのでしょうか。

その場合は、家庭裁判所に調停を申し立てることができます。
相続人のみの遺産分割協議と異なり、調停委員が間に入ることで協議がまとまりやすくなります。

それでも調停が不成立に終わった場合は遺産分割審判手続きが必要となります。

 

相続の実行

遺産分割協がまとまると、次に預貯金口座や株式の名義変更や不動産の相続登記など、実際に相続を実行していきます。

これらの手続きの際には遺産分割協議書が必要です。

 

相続税の申告

次に、相続税の計算をして、納税額のある人は相続税の申告をしなければいけません。

ただし、相続財産の総額が基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超えない場合は納税義務がないので申告の必要はありません。

 

 

今回は遺言書がある場合とない場合の相続の進め方を解説しました。

遺言書を残そうかと悩む方の参考になればうれしいです。

遺言書なしの場合は遺留分ではなく法定相続分で相続される点に注意

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相続頑張るFPです。

 

「特定の相続人に特別にお世話になったので相続の割合を多くして感謝を表したい」
「でも他の相続人から不満が出たり不公平感を感じさせてしまわないか心配だ」

このようなことを心配される方も少なくないようです。

遺言書を作成したいと思いつつも「法定相続分の通りに財産を分けないといけないのか」「遺留分との関係は?」と疑問をお持ちの方もおられます。

それでここでは、遺言書と遺留分の関係について解説したいと思います。

 

 

遺留分とは

相続の基本的な考え方として、だれでも財産を自分の思い通りに処分することができます。
法律によって遺言は最大限尊重されているため、残された遺族は、基本的には遺言通りに財産を振り分けることになっているのです。

 

とはいえ、遺言者が自分の意思で自由に財産を処分することができる、というのは相続人以外の人にも財産を与えることができることを意味します。

 

では仮に「全財産を愛人に譲る」と遺言すればどうでしょうか。
残された家族や子供はたちまち生活に困ってしまうかもしれません。また心情的にもこれはあまりに酷な内容といえるでしょう。

 

そこで民法では、遺族の生活保障の観点から、一定基準の相続財産を遺族に残すように定めています。
これが「遺留分」です。

 

この遺留分の制度で遺言に一定の制限をかけて暴走を防いでいるわけです。
結果として、相続人はこの遺留分の制度によって、最低限度の財産を相続できるよう保証されているのです。

 

遺留分が認められる相続人

遺留分が認められるのは下記の人に限られています。

被相続人の配偶者
・直系卑属(子、孫、ひ孫など)
・直系尊属(親、祖父母、曾祖父母など)

 

ここからわかる通り、被相続人の兄弟姉妹には遺留分は認められていません。
遺言内容で取り分がゼロだったとしても、被相続人の兄弟姉妹は法的に何も主張することができないわけです。

 

被相続人の子供が亡くなっているときは、亡くなった子供に子や孫がいれば代襲相続により遺留分が認められます。
たとえば、被相続人の子供が被相続人より先に亡くなっていて、その子供に子(被相続人からすると孫)がいれば遺留分が認められます。

 

遺留分が認められない相続人

相続人であっても下記に該当する人には遺留分は認められません。

・相続放棄者
・相続欠格者
・相続廃除者

 

相続放棄者

相続放棄とは、被相続人の一切の財産に対する相続権を放棄することです。
一切の財産、つまりプラスの財産もマイナスの財産も引き継がない、ということです。

 

相続放棄した場合、放棄した人は始めから相続人ではなかったものとみなされ代襲相続はできません。
子供が相続放棄の選択をした場合には、孫にも遺留分は認められないことになります。

 

相続放棄は単なる相続人の間での口約束や宣言ではありません。
法的に相続放棄が認められるためには、相続開始から3か月以内に家庭裁判所へ届け出ることが必要です。

 

相続欠格者

相続人であっても、下記にあてはまる人は相続人としての権利を失うことになります。

詐欺や脅迫によって被相続人に遺言書を書かせたり変更させたりした
・遺言書を偽造、変造、破棄、隠匿した
・被相続人や自分と同順位、先順位の相続人を殺したり殺そうとして刑を受けた

 

これらに当てはまる人は、相続欠格者として遺留分は認められません。

 

ただし代襲相続は認められるので、相続欠格者の子供(被相続人からすると孫)は代襲相続人になることができ、遺留分が認められます。

 

相続廃除者

相続廃除とは、被相続人を虐待したり重大な侮辱を与えたりした相続人から、相続の権利を奪うことです。
相続人の非道な行動によって、相続人やその家族の平和がいちじるしく乱された場合、その相続を排除することができます。

 

相続廃除は、被相続人が家庭裁判所に申し出る方法と遺言にその旨を遺す方法があります。
家庭裁判所に申し出て、排除の理由が認められたときに相続人の資格がなくなります。

 

相続廃除により相続の権利が奪われるのは本人のみに限られます。それで、相続廃除者の子供には代襲相続が認められます。

 

 

今回は、遺留分や遺留分が認められる相続人についてみていきました。

次回は遺言書がある場合とない場合それぞれの相続の進め方を紹介したいと思います。

家族信託が必要になるケース・必要ないケース

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相続頑張るFPです。

前回は、家族信託のメリット・デメリットをみていきました。

 

この記事では、家族信託が必要になるケース・必要ないケースを紹介していきました。

 

家族信託が必要になるケース

以下で説明するようなケースに当てはまる方は、家族信託の利用を検討しましょう。

 

代々引き継いでいきたい財産がある

先祖から引き継いできた土地など、代々一族に遺していきたい財産がある場合、家族信託は非常に有効です。

 

例えば、遺言書によって土地を長男に相続することは可能です。
ですが、長男に相続させた後、長男が死亡した場合の相続人を定めることは遺言書ではできません。

 

ですから、長男が土地を相続した後、長男が遺言書を残さない場合は、その先の相続人は法定相続人によって遺産分割されます。

 

長男に子がいない場合は配偶者に、その配偶者が亡くなれば配偶者の兄弟姉妹に土地が取得される場合もありますし、長男に子がいる場合でも、兄弟がいれば遺産分割協議を行わなければならず、土地を分割したり、売却してお金に換えたりする必要がでてきます。

 

家族信託を使えば、長男が死亡した後の相続人を指定することができますので、先祖からの土地を一族で引き継いでいけます。

 

親が認知症になっても資産運用・相続税対策できる

もし、親が認知症になって、財産管理に関して判断力が十分でないとみなされた場合、土地などの不動産を売却したり、有価証券の売却を行ったりすることができなくなる可能性があります。

 

そうなった場合、成年後見制度を利用して、後見人に財産管理してもらうしかなくなります。

 

成年後見制度における財産管理は、あくまでも本人の利益のためだけに行われるものですから、財産を増やすために運用したり、相続税対策のために収益不動産に買い替えたりすることはできません。

 

ですが、家族信託の場合、受託者の判断で柔軟に財産管理することができますので、資産運用や相続税対策に有利となります。

 

障害のある子どもの生活が守れる

障害のある子どもがいる場合、親自身が認知症になってしまったら、子どもの生活を守ることが難しくなります。

 

信託契約によって、信頼できる家族や親族などを受託者、子どもを受益者に設定しておけば、子どもの生活を金銭面で守ることができます。

 

家族信託が必要ないケース

家族信託は、どんなケースでも有効というものではありません。
家族信託を行う必要がないケース、家族信託を行うことが難しいケースもありますので、ご注意ください。

 

資産が少ない

家族信託は、自分の財産の管理を、信頼できる家族に託すことができるという仕組みです。

 

売却するような不動産がないケースや、管理するほど預貯金が多くないという場合は、家族信託する理由がありません。

 

家族仲が悪い

家族信託では、特定の子どもだけが受託者となり財産管理します。
また、先祖代々の土地を先々まで相続指定することも可能です。

 

ですから、信託契約を締結する際には、特に相続に関わる家族で十分に話し合いをする必要があります。

 

このとき、兄弟仲が悪いような場合、受託者以外の兄弟が文句を言ったり、親が亡くなった後の遺産分割で揉めてしまったりします。

 

家族の中で特定の人を受託者とすると揉めてしまう場合は、任意成年後見契約を司法書士や弁護士といった専門家と締結しておいた方がよいでしょう。

 

認知症の兆候がない

本人が健康で、認知症の兆候が全くないという場合、家族信託を締結する必要性は感じないでしょう。
また本人が、自分の財産を適切に管理できていれば、家族信託は必要ありません。

 

しかし、事故や脳卒中による高次脳機能障害でも認知能力、判断能力が著しく低下することはあります。

 

リスクの考え方は人それぞれですが、信頼できる家族がいるのであれば、早めに家族信託の利用を始めるということも検討しましょう。

 

裏技として途中から家族信託に移行も可能

自分が健康で、認知症等などで判断能力が十分ではないと判断されるまでは、家族信託を始めたくないと考える方もいるでしょう。

 

そのような場合、途中から家族信託に移行することができます。

 

まず、自分が認知症等になった場合に備えて、信託財産(管理を任せたい不動産物件など)、受託者、受益者などを定めた信託契約書を作成しておきます。

 

そして、自分が認知症等になったときは、事前に依頼した司法書士や弁護士といった専門家が手続きを行い、家族信託をスタートさせるという方法です。

 

通常の家族信託は、自分が元気なうちから、財産管理を子どもなどの受託者に任せていきますが、家族信託の発効タイミングを設定し、認知症等になった後などから始めることが可能です。

 

家族信託に必要な書類

家族信託で最も重要な書類は、信託契約書です。

信託契約書には、信託の目的、財産、受託者・受益者の指定、財産の管理・運用方法など、必要な項目を記載し作成します。

さらに加えて、下記のような書類が必要になります。

 

・信託財産とする不動産の権利書
・固定資産税評価証明書
・信託目録(契約書内に記載の場合は不要)
・委託者、受託者、受益者の印鑑証明書
・委任状(専門家に手続きを依頼する場合)

 

家族信託は、代々引き継いでいきたい財産がある場合、柔軟に財産管理して欲しい場合などに有効な方法です。

 

逆に、管理してもらうような財産がない場合は必要ありませんし、特定の家族を受託者にすることでトラブルになるようでしたら、専門家に後見人を依頼する契約を締結した方がよい場合もあります。

 

家族信託は、認知症になってしまった場合の対処法ではなく、認知症等になるリスク対応する方法です。

家族信託の仕組みを理解し、まず自身に必要かどうか考えてみましょう。

家族信託のメリット・デメリット

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相続頑張るFPです。

 

自分が将来認知症になった場合の財産管理を家族に任せるために、家族信託を考える高齢者が最近多くなっているようです。

 

認知症等で、判断能力が著しく低下してしまった場合、自身で不動産などの財産を管理・処分することができなくなってしまいます。

 

そのような場合、成年後見制度を利用して、家庭裁判所が選任した成年後見人に財産管理を任せるという方法がありますが、財産の売却には家庭裁判所の判断が必要になるなどの制約を受けることになります。

 

そうした問題を回避するために、財産管理の自由度が高い家族信託を検討する方が増えてきているようです。

 

本記事では、家族信託のメリット・デメリットを解説したいと思います。

 

家族信託のメリットとは?

家族信託の最大のメリットは、柔軟な財産管理を簡単に行えるということです。

 

成年後見制度における財産管理では、資産の積極的な運用や、生前贈与といった相続税対策を行うことが難しく、家庭裁判所への確認、報告の義務もあります。

 

ですが、家族信託では、信託契約によって本人の望む通りに財産管理・運用などを受託者に任せることができますから、より柔軟な財産管理が可能となります。

 

また、遺言書の代わりとして、財産を承継する者を指定することができます。
家族信託では、信託契約書を受託者(信頼できる家族)と締結しますので、遺言書作成のような厳格な方式は必要ありません。

 

さらに、遺言書ではできない、先々の代まで財産を承継する人を指定するということも可能です。

 

そして信託契約では、受益権を承継させることも可能です。
例えば、本人が死亡した後、受益者を配偶者に変更することができますので、財産相続だけでなく、配偶者の生活を守るために財産を利用していくことができます。

 

家族信託のデメリットは?

家族信託は、認知症対策としては万能ではありませんので、デメリットもあります。

 

基本的に、家族信託は財産管理について定めた契約ですから、成年後見制度のような身上監護権は発生しません。

 

信託契約に身上監護に関する内容を含めることは可能ですが、成年後見人と同じというわけにはいきません。

 

また、家族信託の仕組みには節税効果はありません。
財産管理を行う上で、節税対策を行うことは制限されませんが、家族信託自体には節税効果はありませんので、ご注意ください。

 

そして、注意点としては、受託者の設定です。
財産を適切に管理・処分を行うことができて、信頼できる家族がいなければ、家族信託は成立しません。

 

また、特定の子どもなどを委託者に指定すると、他の子どもから不満の声が上がる場合もありますので、十分な検討が必要です。

 

 

今回は家族信託のメリット・デメリットについて解説をしました。

次回は家族信託が必要になるケースと必要ないケースをみていきたいと思います。