相続頑張るFPです。
前回は遺留分や遺留分が認められる相続人について紹介しました。
今回は、遺言書がある場合とない場合それぞれの相続の進め方を紹介したいと思います。
遺言書がある場合の相続の進め方
ここまでは、遺留分について説明してきました。
では、相続手続きを進めるうえで遺留分はどのように扱われるのでしょうか。
遺留分は遺族が相続できると保証されているわけですが、当然ながら自動的に相続手続きがなされるわけではありません。
定められた手続きを経てはじめて、遺留分もしくは相続分を受け取ることができます。
ではどのように手続きを進めていく必要があるのか、遺言書がある場合とない場合に分けて説明していきます。
自筆証書遺言証書の場合は家庭裁判所での検認手続きが必要
遺言書がある場合、開封する前にまず行うべきなのは遺言書の種類を確認することです。
自筆証書遺言、もしくは秘密証書遺言の場合は、開封前に家庭裁判所で検認を行わなければいけません。
検認とは、相続人の立会いの下で遺言書を開封し、偽造や変造がなされていないかを確認する手続きのことです。
遺言の改ざんを防ぐために自筆証書遺言を勝手に開封することは法律で禁じられており、うっかりこれを破ると5万円以下の罰金が科せられる可能性があります。
また、勝手に遺言書を開封すると、当然ながら他の相続人からも遺言書の内容が正確なのか、改ざん・捏造されていないのか、と疑いをもたれることにもなりかねません。
遺言書が自分に不利な内容であって、故意に遺言書を隠匿、破棄、改ざん、偽造などした場合は、相続人としての権利を失います。
自筆証書遺言、秘密証書遺言の場合は必ず裁判所で検認してから開封するようにしましょう。
なお、公正証書遺言の場合はこの検認の手続きは不要です。
遺言内容が遺留分を侵害していた場合は遺産分割協議を行う
遺言書があった場合は、原則として遺言書の内容通りに相続手続きを進めていくことになります。
下記のような流れになります。
・遺言執行者の専任
・財産、相続人を再確認し必要書類を準備
・名義変更など実際の相続手続きを進める
遺言書の中で遺言執行者が専任されている場合もあります。
もし専任されていなければ、相続人の代表者が手続きを進めるか、もしくは弁護士などに依頼して相続を進めていくことになります。
では、遺言書の内容が遺留分を侵害しているなど、一部の相続人が遺言内容に納得できない場合はどうすれば良いのでしょうか。
この場合は遺言書通りに相続を執行するのではなく、相続人全員の話し合いで遺産分割を行うことができます。
ただしこの遺産分割協議は相続人全員の同意が必要であり、話し合いで決めた遺産分割協議書には全員の実印を押さなければいけません。
このように相続人全員の同意が得られるのであれば、遺言書とは違う内容で遺産分割することができるのです。
遺言書によって遺留分が侵害されているのに遺産分割協議に応じてもらえない場合は、遺留分侵害請求権を行使することができます。
このようにして、侵害された遺留分を遺贈や贈与を受けた相手に請求することになります。請求を受けた相手はこれを拒むことはできません。
遺言書なしの場合の相続の進め方
では遺言書がない場合はどうでしょうか。
この場合は、そもそも遺留分という考え方は当てはまりません。遺産分割協議と言って相続人の話し合いで遺産の分割を決めていくことになります。
もしくは法定相続分に従って相続手続きを進めます。
具体的にどのように進めていけば良いのでしょうか。
以下でその流れを説明しますが、相続手続きを進める前に、まずは遺言書が本当にないか、念のためもう一度確認しておきましょう。
相続手続きをある程度進めてから、もしくは手続き全部終わってから遺言書が思わぬところから見つかった、というケースも実際にあるのです。
自筆証書遺言であれば、故人の机や知り合いの弁護士、信託銀行に預けていないか確認しましょう。
公正証書遺言であれば、公証役場で遺言書検索システムを使って探してもらうことができます。
遺言書がないことをよく確認したうえで、実際に手続きを進めるようにしましょう。
相続人の調査と確定
まず行うべきは、相続人の調査です。
家族なのでそんなことは十分わかっていると思っても、実際に被相続人の生まれたときから亡くなるまでの戸籍を準備しなければいけません。あとの相続手続きの際に必要になるからです。
また、この段階で前妻との間に子供がいたとか音信不通の親や兄弟がいることがわかるケースもあります。実際に戸籍を揃えて法定相続人を確定しましょう。
法定相続人の範囲と順位については後で解説します。
相続財産の調査
次に、被相続人の財産を調査していきます。
預貯金や不動産などプラスの財産だけではなく、ローンなどマイナスの財産も調査し確認していかなければいけません。
具体的には、被相続人が利用していた金融機関に残高証明書を請求したり、所有していた不動産の固定資産課税台帳を市役所で交付してもらいます。
また株式についても、証券会社などに問い合わせて取引残高報告書を取り寄せます。
被相続人の遺品整理の際に、財産に関する資料や手がかりを集めておくと良いでしょう。
遺産分割協議
相続人と相続財産が確定すると、次に相続人全員で話し合って遺産分割協議を行います。
遺産分割協議では、だれがどの財産を相続するのかを話し合い、決定した内容を遺産分割協議書に記します。
話し合いによって遺産の分割方法を決めていくので、相続人全員の同意が得られるのであれば、誰か一人に全財産を相続させる、ということもできます。
もちろん、一人の相続人が提案した遺産分割方法に他の相続人が同意することでも協議成立となります。
いずれにしても相続人全員の参加、同意が条件となります。
法定相続人が一人の場合はこの遺産分割協議は必要ありません。
では、もし相続人同士の話し合いがまとまらなければどうすれば良いのでしょうか。
その場合は、家庭裁判所に調停を申し立てることができます。
相続人のみの遺産分割協議と異なり、調停委員が間に入ることで協議がまとまりやすくなります。
それでも調停が不成立に終わった場合は遺産分割審判手続きが必要となります。
相続の実行
遺産分割協がまとまると、次に預貯金口座や株式の名義変更や不動産の相続登記など、実際に相続を実行していきます。
これらの手続きの際には遺産分割協議書が必要です。
相続税の申告
次に、相続税の計算をして、納税額のある人は相続税の申告をしなければいけません。
ただし、相続財産の総額が基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超えない場合は納税義務がないので申告の必要はありません。
今回は遺言書がある場合とない場合の相続の進め方を解説しました。
遺言書を残そうかと悩む方の参考になればうれしいです。