実際にあった遺産”争”続① ~離れて暮らす姉妹の確執~

 

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兄弟の確執

 相続頑張りFPです。

今回は私が信託銀行時代に実際に経験した、離れて暮らす姉妹の間で起こった相続争いについて紹介します。

 

親と同居している方が得?

今回ご紹介するのは離れて暮らす姉妹に起こった確執をご紹介します。この姉妹は相続が発生するまで、よく連絡をとりあう仲の良い姉妹でした。しかし、母親の相続で双方の意見が真っ向から対立し、不仲となってしまったのです。

相続が発生した時の状況は以下の通りです。

 

被相続人:姉妹の母親、夫は既に他界
長女:独身で母親と同居。仕事をしていたが、母親の介護のため、転職し収入は減った 次女:結婚して専業主婦。離れて暮らしており帰省は年に1、2回程度

財産 ①自宅不動産(評価額約5,000万円) ②金融資産約5,000万円

 

 

被相続人は遺言を残していませんでした。しかし、娘二人に対し、「二人で平等に分けて欲しい」と伝えていました。二人とも平等に分けるということで納得していたことと、普段から姉妹が仲が良いことを知っていたので、まさか揉め事になることはないだろうと思い遺言は作成しませんでした。

 

しかし、実際に相続が発生すると姉妹が感じている「平等」は考え方が異なることが発覚しました。

長女は同居している自宅不動産は長女が相続し、残りの金融資産を半分ずつ相続することが「平等」だと考えていました。

一方の次女は自宅不動産も含めて半分ずつ相続することが「平等」だと主張しました。

長女は民法の法定相続割合の通り配分するとすれば、次女の主張が正しいということを認めたものの、晩年の母親は介護が必要であり、年1,2回程度しか帰省しない次女は介護に参加していないため、全く同じ配分は納得いかない、母親もそう思って「平等」と言っていたはずだ。と主張しました。

次女は介護には参加していないことは認めたものの長女は同居していたことで、生活費等様々な援助を受けていたはず。今ある財産を半分ずつ相続したとしても長女の取り分の方が多く、介護での労力と相殺できる。次女も長女と同じく、母親もそう思って「平等」と言っていたはずだ。と主張しました。

双方の意見は食い違いましたが、最終的には話し合いの結果、長女が自宅不動産と金融資産1,000万円、次女が金融資産4,000万円を相続することとなりました。この結果は二人で話し合いの結果最終的に折り合いをつけた形となりましたが、双方納得しておらずわだかまりが残る結果となってしまいました

相続がきっかけでこれまで仲が良かった姉妹は連絡も取り合わないようになってしまったのです。

「平等」は人によって感じ方が違う

今回のケースでは何故、仲のよかった姉妹で揉めることになってしまったのでしょうか。その理由は「平等」という言葉の感じ方がそれぞれ違うと言うことがあります。

被相続人は姉妹の親であり、自分が育てた子どもたちであるからこそ、姉妹は阿吽の呼吸で分かりあえてうまく財産を分け合うことができるだろうという過信がありました。

しかし、姉妹は離れて暮らし、それぞれの社会や家庭での価値観で生きていますので、一緒に暮らしていたころのようにはいきません。

実際に二人が考える「平等」には大きな開きがあり、お互いが「母親はこう思っていたはずだ」と主張することになってしまったのです。

 

どうすれば姉妹の揉め事を回避できた?

今回のケースではどうすれば姉妹の揉め事を回避することができたのでしょうか。それは姉妹に対して、どのような配分にするべきかを具体的に示しておくべきだったと言えるでしょう。

姉妹は双方が「母親はこう考えていたはずだ」と主張を繰り返しています。そのため、しっかりとした配分を示すことが重要でした。

次に配分を示す方法を具体的に確認しておきましょう。

①遺言を書く

相続人に配分を示す際は遺言を書いておくのが一番の方法です。遺言の最大のメリット全財産について細かく配分を指定することができるのです。

今回のケースであれば、自宅の不動産を長女が相続し、金融資産をどのような配分で相続するかが焦点となってきます。相続人である姉妹は母親が考える平等な配分で相続することには納得していたため、母親が考えた平等をしっかりと示すことで揉め事は回避できた可能性が高いでしょう。少なくとも「母親はこう思っていたはずだ」と双方が主張することにはならかったはずです。

ただし、遺言はメリットが大きいものの、不備があると遺言の効力が無くなってしまうと言うデメリットもありますので慎重に作成する必要があります。

同居の長女が深く関与すると相続人間での公平性が失われてしまいますので、弁護士等の第三者と相談して遺言を作成する方がよいでしょう

②生命保険を契約する

相続財産の配分を示す方法として生命保険を活用する方法も有効な手段です。今回のケースでは、例えば献身的な介護を続けた長女に1,000万円多く財産を遺しておきたいと考えたのであれば、長女を受け取り人とする生命保険を1,000万円契約しておくとよいでしょう。

生命保険は相続財産とは別の固有の財産として長女が相続することになりますので、母親は長女に1,000万円多く財産を遺したいという意思を示すことが可能です。

ただし、生命保険を契約するだけでは残りの財産をどのように配分したかったたを示すことができないため、相続人には生命保険の内容や契約した理由を説明等、生命保険を契約した意図を示しておく必要があります